ATi

かつては業界最大手、現在は破竹の快進撃を続けるnVidiaに対して唯一対抗しうるベンダ。
単品ボードの外販を行っているが、チップ単体でのOEMが非常に多い。
いわゆるWindowsPCだけでなくMacintoshのグラフィックスチップも手がけており、製品の層は厚い。
が、近年この分野でもnVidiaに大きく浸食された印象がある。
性能を高く評価されることは少なかったが、現状では独走中のnVidiaに唯一性能で戦えるベンダとなっている。
Chip単体での外販を行う戦略に転換するようで、ATi以上の品質のカードも登場するかもと期待。
webpage
RAGE3D (fan site / unofficial beta)

RAGE PRO
 過去の流れから呼ぶならば3D RAGE PROと呼ぶことになるが、先頭の3Dはこの代から先には付属しない。
 DAC内蔵。
 AGP2X/PCIで、AGP2Xへの対応はこのチップが最も早かったのではないだろうか。
 同世代のRIVA128が非常にめざましい成功をしたため少し影が薄いが、同等近い性能を持ってたという印象がある。
 後期にはRAGE PRO TURBOと呼ばれる高クロック版にリプレースされてゆく。このコアはRAGE128ピン互換のRAGE XLにも使われており、代表的なカードであるXPERT98の後期モデルにはRAGE XLチップ搭載品がある。
 Windows2000標準ドライバはマルチディスプレイモードサポート。

・ATi XPERT@Play 8M/PCI
 筆者がまともに使った最初のATiのボード。
 変な癖のない絵で、比較的高解像度まで実用に耐えたことを覚えている。
・ATi XPERT98 AGP
 上のボードとよく似た特性。
 AGP2X。
 AladdinProIIチップセットでもまともに動作したことが印象的だった。

RAGE128
 RAGE PROの後継。
 1998年最強のビデオチップと思われたが、Macintoshへ開発リソースが割かれたのかチップの生産が間に合わなかったのかでPC市場に登場したのは1999年になってからであり、当初は非常にドライバの完成度が低かった。
 AGP2X、DAC内蔵、メモリは32MBまで搭載できる。 基本的にはRIVA TNTクラスの能力を持つ。通常版をRAGE128GL、メモリバスを半分の64bitにしてDDR-SDRAM対応(といっても、採用された例は知らないが)にしたものをRAGE128VRと呼ぶ。
 明記されていないが、製品のランクによって動作周波数に差があり、リテールと比べてバルク品の周波数は低い。
 なお、現在でも特定のソフトではFogが有効にならないという問題が残っている。

・ATi RAGE FURY
 RAGE128GL。
 RAGE128シリーズでは最も上位のボード。
 RAGE128GL,32MB,TV出力。TV出力がないものをRAGE MAGNUMと呼ぶ。
 赤みの強い良好な画質が記憶にある。高解像度にはそれほど向かない。
・ATi XPERT128
 RAGE128GL。
 RAGE128シリーズの標準品。
 16MB。
 基本的な特性は上に準じる。
・ATi XPERT99
 RAGE128VR。
 RAGE128シリーズでは最も下位のボード。
 8MB。
 GLとVRでは結構速度差があり、VRではRAGE PROと大差ない。

RAGE128 PRO
 RAGE128の後継というよりは高周波数版のような印象なのだが、ドライバも別であることなので、別物として取り扱う。
 基本的な機能においてはほとんど差がなく、単純に速度が向上した感がある。
 Fogの問題は健在。

・ATi RAGE FURY MAXX
 ATiにしてはきわめて珍しい無理をした設計のボード。
 RAGE128PRO*2で、双方が独立で32MBのメモリを管理する(64MB搭載)。
 3dfxのSLIのようなコンセプトで、フレームごとに両チップに分散処理が行われるが、これは3D処理でのみ有効。
 空きランドの様子からすると、各チップを独立にマルチモニタ体制がとれるように設計されているように思える(筆者の所有ボードでは空きランドなので不可能)。
 速度的には過剰なまでのCPU依存タイプで、低周波数のCPUでは大した働きをしないが、700MHz以上のプロセッサあたりと組み合わせるとGeForce256級の性能を発揮する。アプリケーションによる得手不得手も激しく、使いこなしの難しいカードではある。
 RAGE128の物と画質に大差ない。
 ボードやチップの設計の問題で、Windows2000のドライバは存在しない。

R100 (RADEON family)
 RAGE128系からずいぶん間をおいて登場した後継チップ。
 いわゆる初代RADEON。
 開発コードRage6、あるいはR100。
 おそらく旧TesngLabsのチームの手によるのではなかったかと思う。
 AGP4X,350MHzRAMDAC,DDR/SDRのSDRAMに対応する。
 CHARISMA ENGINEと呼ばれる、ハードウェアT&L機能を搭載している。レンダリングエンジンの方はPIXEL TAPESTRYと呼ぶらしい。
 また、HYPER Zと呼ばれるZ-Buffer分のメモリ転送量を減らすためのアーキテクチャを採用しており、具体的には、非表示部分のZ-Bufferを転送しない、転送データそのものを圧縮する、メモリの初期化を高速化する、の3つのテクノロジから成っている。3D使用時のメモリ帯域の有効利用が行われ、ちょうど何ランクか上の高速メモリを使用したのと同様の効果がある。
 チップ自体の性能としてはnVidiaのGeForce2GTSと対等レベルであり、部分的には勝り、部分的には劣る感じ。
 現時点のnVidiaチップではサポートしていない環境Mapingなどの機能を持ち、機能的にはGeForce系を上回る。また、DVDデコード支援に関しては定評がある。
 2000年中期としてはトップクラスの性能であり、独走状態のnVidiaに対抗しうるほぼ唯一のチップとなっている。
 筆者の感覚としては、日常的な使用感はnVidiaチップの物より快適。

・ATi RADEON 32MB DDR
 標準的な位置づけのRADEON搭載ボード。
 AGP4X,DDR-SDRAMを32MB搭載。
 メモリクロックは166MHzだが、上位版の64MB版は183MHzであるようだ。
 画質は比較的良好で、やはり赤系発色に寄るが、過去の製品群と比べると随分ニュートラルに寄った感がある。
 チップの性能と併せてボード自体の品質は、標準的な品質のGeForce2GTSボードを上回る。
・ATi RADEON 64MB DDR VIVO
 RADEON搭載の上位モデル。
 Video In Video Outを表記上VIVOと略した。
 AGP4X,DDR-SDRAMを64MB搭載。メモリクロックは183MHzのようだ。
 コンポジット/S-Videoの映像出力、コンポジットでの映像入力があるが、筆者は試していないので性能は知らない。入力にS-Videoがない仕様なのが残念。
 画質は上の32MBモデルと変わらない。
 2001年1月の時点では、ドライバの完成度に特に問題は見られなかった。
・ATi RADEON LE
 RADEON LE搭載とされる廉価モデル。
 RADEON LEとはRADEONからHYPER Z機能を削り、動作周波数を143MHzに落とした物とされるが、HYPER Zはソフトウェアで無効にしてあるだけで有効にすることも可能であり、動作周波数は放熱機構がRADEONより弱い構成になっているため、下げざるを得なかっただけにすぎない。
 すなわち、RADEONそのものでしかないため、RADEONの項に分類した。
 AGP4X,DDR-SDRAMを32MB搭載
 RADEONと異なり冷却用にファンが取り付けられておらず、アルマイト加工のヒートシンクのみの構成になっている。
 RADEONの放熱ファンは比較的騒音が大きいため、静かなPCを望む向きにはむしろ歓迎される仕様だろう。
 ATiのロゴがないPCBなど、表だっては流したくない品物であることが伺える。中国市場向けの廉売品とのことで、生産も含めて中国であるようだ。
 ただし、ボード自身の品位は他の製品と大差なく、ATiらしい高画質も健在である。
 GeForce2MXやRADEON VEのような、メモリをナローバンド化させた廉価製品とは異なり、128bit/DDRでHardwareT&Lが使用可能な非常に高性能な廉価品であり、きわめてコストパフォーマンスが高い。
・ATi RADEON 32MB PCI
 32MBのSDR-SDRAMを搭載した、RADEONのPCIモデル。
 DDRでなくSDRであるというだけでなく、メモリはx16品を4枚という構成なので、64bit幅と、通常のDDR/AGPのRADEONの1/4のメモリ帯域しか持たない点に注意する必要がある。
 画質は初代RADEON系の、RAGE128ほどではないが赤みの強い画で、高品質ながらも後のモデルと比べると実用となる解像度の限界は低い。
 性能に関しては「RADEONの性能」を求めると悲惨ではあるが、RV100コアの物よりは高速であり、PCIという限定された選択肢の中では有望な方なのかも知れない。

RAGE XL
 RAGE PRO TURBOをBGAパッケージにし、RAGE128シリーズとピン互換にした物。

・ATi XPERT98 AGP
 同名のボードがRAGE PROベースで存在する。
 おそらくXPERT2000のPCBをそのまま流用している。
 詳しいことはよくわからないが、RAGE PROのボードに対して意味のある差を感じなかった。

RAGE IIC
 このチップの素性を筆者はよく知らない。
 3D RAGE II系のコアをRAGE PROとピン互換のパッケージに仕立てた物と思われる。
 性能的にはRIVA128やRAGE PRO以下の性能で、取り立てて注目する部分があるとは思えなかった。

・CARDEXPERT RAGE IIC
 8MB版と4MB版があり、それぞれAGP/PCIモデルがあるが、細分して記述するほどの意味はないと思われるのでまとめて。
 そこそこの画質にそこそこの2D速度で廉価なので、適当に使うボードとしてはいいかもしれない。

Mach64-GX
 今から見れば古いチップ。当時の感覚ではそれなりに速かったと感じていたが、当時がいつなのかも記憶は定かではない。
 それくらいには古いってことで。
 DualPortRAM専用(じゃなかったかな)。通常のDRAM用モデルがMach64-CXだったような気もするが、詳しくは知らない。
 DAC外付け仕様。Mac用の板ではIBM RGB526が使われていた記憶がある。

・ATi GRAPHICS PRO TURBO PCI
 DualPortRAMを2MB搭載したボード。4MB版もあった気がするが所有したことはない。
 RAMDACとしてATi製の"SPECTRA DAC"なる135MHzのRAMDACを搭載している。
 筆者の手元にあるボードに関してはさほど画質が良いとは思えないが、個体差または劣化であるかもしれない。

Mach64-VT
 新しくも速くも、さして特徴もないので、簡単に。
 PCI、DAC内蔵仕様。

・メーカ不詳安物
 VGAのコンソールが出ればいい程度で買った安物。
 PCI。
 何故かWindows98では標準のドライバが読み込まれず、付属のドライバを使う必要があった。

RAGE Mobility-P
 RageProコアのモバイル向けバージョン。
 AGP2X、DAC内蔵仕様。
 ビデオメモリは内蔵しない。

・PowerColor CR216-4M
 モバイル向けに関わらず単品カードとして登場した珍しい例。
 画質は良くない。
 AGP。

RV100 (RADEON family)
 いわゆるRADEON VE。
 R100(RADEON)を元に実装を容易にするためと、ダイサイズと消費電力の低減、ピン数削減を行った、おそらくはノート用のMOBILITY RADEONと同一コアのグラフィックスチップ。
 ピン数の削減により、メモリアクセスは64bitに制限されており、ダイサイズを削ったことによってCHARISMA ENGINEが削られている。
 新機能としてHydraVisionという、要するに2画面出力機能が装備されていて、従ってRAMDACは2つ装備されている。
 RV100のHydraVisionの機能は使用するOSによって制限を受けるため、HydraVisionによるマルチモニタ機能はWindowsXPまたはWindows98/Meを使う方が使い勝手に優れる。
 R100に対する速度的なメリットは全くなく、基本的には組込用チップとしての作りになっており、これを利用してデスクトップ用ビデオカードを作る意味は実際のところさほどないように感じる。HydraVisionをどれだけ魅力として感じられるかによるだろう。
 ファンクションレベルではR100と同等であり、サポートする3D機能はGeForce2ファミリより多い。CHARISMA ENGINEを搭載していないため、CPU依存の面が強く、メモリ帯域の上限値が低いため、高解像度や多色環境ではRADEONに対して大きく後れをとる。
 また、このチップは後にRADEON7000と改称された。

・ATi RADEON VE 32MB
 DDR-SDRAMを32MB実装したモデル。
 出力端子としてRGB15,DVI,S-Videoの3つを持つ。変換コネクタやケーブルなど大量の付属品が付く。
 画質傾向は過去の物より赤みのない、特徴の薄い高画質で、過去の物より高い解像度まで実用に耐える。
・HIS EXCALIBUR RADEON VE 32MB PCI
 SDR-SDRAMを32MB搭載。
 特にLowProfileではないと思うが、背の低いカードで黒色のPCBが使われている。
 カード上にRGB,S-Video,C-Videoの出力端子を持ち、別ブラケットにフラットケーブルで配線することにより、もう一系統RGB出力することが出来る。
 メイン側出力の画質は良好で高解像度の実用性も高いが、サブブラケットを介した出力はフラットケーブルの伝送特性のためか、かなり悪い。マルチモニタ用としてはあまりお勧めできない。
 SDR/64bitとメモリ周りが貧弱なため目に見えて遅い部分があり、特に32bit色でのIEスクロールなどにはっきりともたつきがある。

Mach32-AX
 Mach64の先代。この時期のATiチップに関しては筆者は造詣がない。
 IBM8514A互換のようだ。

・ATi GRAPHICS ULTRA PRO PCI
 おそらくDualPortRAMを2MB搭載したボード。
 RAMDACはATi製の68875。75MHz品と思われるがわからない。
 W2kの報告を見る限り、TI製RAMDACを搭載したモデルもあるようだ。
 画質はATiらしく赤みの強い画で、特に良くも悪くも感じなかった。

RV200 (RADEON family)
 R100(RADEON(7200))にR200(RADEON8500)ベースの技術が注ぎ込まれた、R100 RADEONの改良品。
 具体的にはRAMDACを2つとTMDSトランスミッタを搭載し、HydraVisionが利用可能(この頃のものはWindows2000での使い勝手は良くない)になっていること、メモリコントローラがR200ベースの物になっていることが変更点だが、製造プロセスが0.18ミクロンから0.15ミクロンにシュリンクされており、それによって動作周波数が向上(少なくとも初期の製品は270MHz)していることが大きな性能上昇につながっている。
 RV200という第2世代を思わせる名称ながら、DirectX8系のファンクションにフル対応しているわけではなくDirectX7系のファンクションに特化した設計となっている。実用上の特性はR100 RADEONに準じる。HydraVision搭載の高速RADEONという認識で良いと思われる。

・ATi RADEON7500
 DDR-SDRAM(230/460MHz)を64MB実装したモデル。
 出力端子としてRGB15,DVI,S-Videoの3つを持つ。バルク品にはS-Videoケーブルが付属していたが、付属品が異なるバルクもあるかも知れない。
 画質傾向は過去のATiのような赤系が強い発色とは感じず、癖の少ない画と感じた。1600*1200程度で破綻せず、2048*1536でも実用となる信号品位であると思われる。ドットクロックを上げすぎると黒地に白の線や字が痩せる傾向が見られるが、1600*1200程度ではさほど気にならない。発色が弱いということもなく、かなり良質な画質品位と思われる。
 チップファンの騒音はそれなりに大きいが、このレベルのカードとしては標準的といえる。静音化を志す方にはお勧めしない。
・ASK Select RV2P-T/D-64D
 製品名として何を記述すればよいのかわかりにくくて困るが、PowerColor製のカードで、RV2P-B3と基板上のシールに記述がある。
 LowProfileサイズのPCIのカードで、フルサイズのブラケットとLowProfileのブラケットを付け替えることにより、両対応となっている。RADEON7500LE搭載ということになっているが、実際のところ低クロック動作であるだけで、後述の内容を指してLEと呼んでいるのかも知れない。また、これを受けてファンレス、ヒートシンクのみの冷却となっている。
 VRAMはDDR-SDRAMを64MB搭載しているが、x16品4枚の構成であり、64bitでしか結節されていないことに注意を払う必要がある。メモリ性能はSDR/128bitより確実に低いだろう。
 出力端子はD-sub15ピンとDVI-I、TV出力(C-VIDEO)の3つ。内、D-sub端子はフラットケーブルで引き出す形式となっていて、LowProfileブラケットを使用した場合は利用できない(また、製品にはDVI-AをD-subに変換するコネクタの類は付属しない)。
 速度性能はPCIということで多くがスポイルされるが、数少ないPCIの選択肢として多くを望むのは酷というものだろう。
 画質性能はRADEON7500の品質を期待すると期待はずれに終わるが、1280*1024程度なら実用の品質は得られる。フラットケーブルのせいで劣化している可能性を考えて、DVI側でDVI-Aのケーブルで接続してみたが、D-subと大差ないか劣る結果となった。

R200 (RADEON family)
 2世代目RADEON。
 AGP4X,DDR/SDRのSDRAMに対応する。
 初代の機能を改良、DirectX8(8.1 base)に最適化したチップで、HW-TCLエンジンのCHARISMA ENGINE、レンダリングエンジンのPIXEL TAPESTRY、圧縮によるメモリ帯域有効利用技術のHYPER Zがそれぞれ第2世代を示す「II」に進化している。
 基本的にはDirectX8ベースのプログラマブルなTCL、SHADERに向けて最適化したチップで、GeForce/RADEONの登場以降はグラフィックスチップの世代は最適化対象のDirectXのバージョンで考える時代となっていることを痛感させられる。
 RV200と異なり、性能追求のために付加機能部分を集積しなかったようで、RAMDAC1系統(10bit,400MHz)、TMDSトランスミッタ1系統(1Link)を内蔵するのみで、残りの出力機能は外付けチップに依存する。アナログ出力2系統目には外付けRAMDACを、TV出力にはRageTheaterチップを利用する、ある意味贅沢な設計になる。
 また、外付けTMDSトランスミッタを2つ利用することでTMDS2Link接続が可能となっている(内臓+外付け1Linkチップでは2Linkにできないようだ)。 nVidia製品としてはGeForce3ファミリと競合する位置づけにあり、性能も大差ない。
 TMDSトランスミッタの仕様なのかVGA-BIOSの問題なのかはわからないが、DVI-D出力に仕様外の部分があるため接続相手を選ぶ状況があるようだ。また、負荷の内容によってDVI-I側のアナログ出力がやや乱れる現象もあるようだ。これはマザーボードによって再現性が異なるようだ(筆者の環境では3D表示時にDVI-I側のアナログ出力が波打つ)。
 R200のHydraVisionはWindows2000環境での使い勝手は良くない。

・ATi RADEON8500 64MB
 AGP、DDR64MB。
 基本的にはATiから出荷されたリテールBOXのみコアクロック275MHz品の"RADEON8500"であるが、後にサードパーティからの出荷分にも275MHzの"RADEON8500"カードが登場した。
 画質傾向はRADEON7500同様の、多くの他社製品よりは強い発色ながら過去のATiのような赤寄りの強い発色とは感じられず、どちらかというと解像度に振った画質と思われる。非常に良質な画質で、CanopusのSPECTRAなどと比較できる品位ではあるが、SPECTRA(SuperFine)より発色は弱く、全体に若干劣る品位と感じた。
 コネクタはRGB15,DVI-I,S-Video。
 R200自体が持っているRAMDACは1系統で、AnalogDevices ADV7123 外付けRAMDACをDVI端子側のアナログ出力に利用する設計になっている(ちなみに、ADV7123が省略されているFireGL8700ではDVI端子がデジタル専用のDVI-Dとなっている)。
 また、TV出力のためだけにRageTheaterチップを搭載している。
 チップファンの音はこのレベルのカードとしては標準的で、静音化を志す方にはお勧めしない。
・ATi RADEON8500LE 64MB
 RADEON8500の低クロック版(250MHz)で、それ以外にこれといった違いはない。

RV250/280 (RADEON family)
 R200コアを元に作られた廉価版。
 RV250はAGP4X、PCIに対応し、後に登場したRV280は加えてAGP8Xに対応した。
 削られたのはVertexShaderとレンダリング段のテクスチャユニットで、それぞれ2ユニットから1ユニットに削減されている。もっとも、VertexShaderの2ユニット目はDirectX8の段階では機能しないこと、テクスチャユニットの数はマルチテクスチャなど以外では性能への影響が少なくて済むことなど、削り所を上手に選んでいると筆者は感じた。
 128bit幅のDDR-SDRAMメモリコントローラであることには変化はない。R200を改良して素直にした物という印象があり、扱いにくさはなりを潜めた感がある。
 RV250について、動作周波数により、RADEON9000PRO、RADEON9000と区分けされており、9000proがRADEON8500LEにやや劣る程度の性能を示す。9000番台ではあるが、DirectX9ベースのチップというわけではなくDirectX8.1ベースのチップであり、RADEON8300程度の命名がふさわしいかも知れない。
 RV280についてはRADEON9200PRO、9200という名で製品が投入されたが、AGP8Xへの対応以外特に違いはない。RADEON9100と名を変えて再投入されたR200より低速であることには注意を要する。後に追加されたRADEON9200SEは低周波数化とメモリバスの64bit化を行ったもので、最低価格帯に向けた製品となっている。
 R200では1つしか搭載していなかったRAMDACを2つ搭載するなど、機能面の集積は進んでおり、TMDSトランスミッタやTV出力機能など、RV200相当の内容を集積している。
 HydraVisionのハードウエアレベルでの強化がはかられており、従来不可能だったWindows2000環境での各モニタ別々の解像度でのスパン構成が可能となっている。また、マルチモニタ時の速度低下が非常に少なくなっている。RADEON8500のようなサブ側のアナログ出力が乱れる現象もなく、DVI-D出力のイレギュラーな仕様も改善されたようで、マルチモニタ用として非常に優秀であると言える。
 また、新たにFULLSTREAMというストリーミングビデオのハードウェアアクセラレーションに対応している。筆者は検証していないので明言できないが、R300のVIDEOSHADERのような強力な新機能といった物ではなさそうだ。

・SAPPHIRE RADEON 9000 ATLANTIS 64MB bulk
 RADEON9000搭載のAGP用カード。
 筆者が手にしたのはバルク品で、D-sub、DVI-I、S-Videoの出力端子を持った物だが、64MBのリテール品ではDVI-Iが削られている(基板の形も違うようだ)。
 RADEON9000搭載ということで、冷却はヒートシンクのみ。発熱はそれなりにあるので、隣のスロットにはカードを挿さない方が良さそうだと感じた。
 画質は優秀で、1600*1200レベルでの実用性も充分だが、ATi純正の7500/8500と比べるとフォーカスがやや甘く感じた。出力自体は明るめ。

R300/350/360 (RADEON family)
 買収したArtXのチームが手がけたグラフィックスチップで、3DlabsのP10系同様にVPUという名で発表された。DirectX7世代以降(具体的にはHardwareT&Lがキー技術だった)のグラフィックスチップがGPUと呼ばれたように、DirectX9世代以降(Shaderベースの物という意味では、あるいはDirectX8世代でも今後VPUと呼ばれことになるのかも知れないが)のグラフィックスチップはVPUと呼ばれることになるのだろう。
 チップの仕様自体はDirectX9の仕様をほぼそのままインプリメントすることを目指したものと見え、VertexShaderを4ユニット(しかも1ユニットごとにスカラープロセッサ1基、ベクタープロセッサ1基という念の入れようだ)、PixelShaderを8ユニット(24bitFP、32bit型は24bitに丸める)搭載し、それぞれVer2.0をサポートする世界初のDirectX9の機能をおおむねサポートしたグラフィックスチップである(ハードウェアテッセレーションは未実装)。この世代のShader機能をATiではSMARTSHADER 2.0と呼んでいる。DirectX7世代のHardwareT&Lユニットは搭載されず、VertexShaderでエミュレートする仕様となっている。
 また、VIDEOSHADERという新機能がある。具体的にはオーバーレイされるデータをPixelShaderで取り扱えるようにするもので、VPUのレンダリング段で実行可能な処理のすべてをオーバーレイデータに対して行えることになる。データの通り道が従来と異なるわけで、単純に動画データにエフェクトをかけることが出来る程度の単純な新機能ではない。これがATi独自の実装なのか、DirectX9がそうした実装になっているのかは筆者の勉強不足のため分からない。
 DirectX9の機能を実現するために膨大なトランジスタ数を必要としたようで、発表によると1億1000万トランジスタを集積している。これを0.15ミクロンプロセスで実現したため、発熱量や電力密度の問題からCPUのようなフリップチップとなっている。
 PCとの接続インタフェースはAGP8X。ちなみに8XはパラレルAGPとしては最後の世代になる予定である。
 メモリバスは合計256bitで、DDR-SDRAM/DDR-II-SDRAMに対応する(SGRAMとしての動作はしないがSGRAMでももちろん良い)。ほとんどの製品はDDRメモリだが、RADEON9800にてDDR-IIメモリが採用されているものがあり、しかしそれほどDDRとの性能差はないようだ。
 メモリコントローラ64bitのものを4つ備えており、それぞれ独立して動作可能である。また、メモリ帯域圧縮技術のHyperZは改良されてHyperZ IIIとなっている。
 HydraVision機能はRV250同等となっており、Windows2000環境でも各モニタ別々の解像度でのスパン構成が取れるようになっている。R200では1系統のみだったRAMDACも2系統搭載されており、カードを作る上で特に付加チップを必要としない。
 最初に発売されたRADEON9700PROに搭載されているのがR300チップで、筆者にはこれ元にステッピングアップを繰り返してR350、R360と言う後継製品としたように見える。R350以降にはFragment-stream buffer(F-buffer)いう無制限の長さのシェーダを実行可能にする機能を組み込んだとされるが、R300であってもF-buffer機能を有効にすることはできるようで、この3つのコードネームのチップは同一設計のステッピング違いと見ていいように思える(たとえばF-buffer機能に関わる部分がR300では正常動作する比率が低いためDisableとなっているかもしれない。他の追加機能においても同様に。ソフト的に上位製品の機能を有効にしても動作しない確率はかなりあると思われる)。なお、R350とR360の目立った違いは動作周波数のみのようだ。
 F-bufferはマルチパスレンダリング用のFiFoバッファといったユニットで、シェーダパイプラインの出力を格納し、入力に書き戻すことで無限長のシェーダを実行可能としている。リアルタイムCG用のユニットではなく、オフラインCG用のユニットである。
 R300に対する製品名としてはRADEON9700シリーズ、R350/360に対してはRADEON9800シリーズが割り当てられている。
 R300については高速な順に、RADEON9700PRO, RADEON9700、R350/360については高速な順に、RADEON9800XT(R360), RADEON9800PRO(R350), RADEON9800(R350)がラインナップされている。
 また、R3x0版"RADEON LE"とでも言うべき、同一ダイで機能を削減したバージョンが追加で発表されている。メモリバスを128bitに削減したRADEON9700を"RADEON9500PRO"、さらにソフトウェア的にShaderユニットを半分無効にしたものを"RADEON9500"という。また、R350で同様にメモリバス128bit化、パイプライン半減処理を施した製品として、非公式ではあるが"RADEON9800SE"という製品が販売されている。RADEON9800SEについては動作クロックはまちまちではっきりしない。
 いずれの低速化製品についても半減されたShaderユニットは有効にすることが可能で、結線されている限りはメモリバスも256bit動作が可能なようである。たとえばRADEON9500ではx32品メモリ8枚実装の逆L字型実装の基板についてはRADEON9700同等(RADEON9800シリーズとしての動作も)とすることも出来るようだが、詳しい内容は他のサイトを探してほしい。
 広範な範囲の製品について記載したため速度について言及するのが難しいが、DirectX9環境においては、RADEON9700PROを速度の物差しとしてみるのが適切なように思える。これに対してRADEON9800シリーズは同じクロックでは微妙に高速、9700/9800についてはあとはクロックなり、メモリバスやパイプラインの半減が性能に与える影響は非常に大きい、といった感じである。
 DirectX8以前の環境でも順当にnVidia GeForce4Tiシリーズ相当〜かなり上回るといった性能であり、万能機といって良い内容と言える。

・ATi RADEON9700PRO 128MB
 RADEON9700PRO搭載のAGP用カード。
 コアクロック325MHz、メモリクロック310MHzで、発表通りの値となっている。
 AGP8X対応とされるが、環境が手元にないのでその点は検証していない。
 赤い基板でATi純正とされるが、製造はSAPPHIREであるようで(しかしMade in Canadaの記述があり、実際にはよく分からない)、サードパーティ製製品との間で違いは冷却部品くらいしか見つけられない。ドライバCDにATi DVD Playerが付属するといった違いはある。
 電気食いであるようで、CanopusのビデオカードやVoodoo5のように外部電源コネクタがある。冷却ファンの騒音はRADEON8500などよりは静かではあるが、注意しないと聞き取れないといった静かさを要求するのは無理がある。また、FC-BGAパッケージのチップであるため、冷却ファンの交換の難易度は高いだろう。
 映像出力端子はD-sub15、DVI-I、S-Video。画質は良好ではあるが、他を圧して優れているといったものとは感じられなかった。高解像度の実用性という点では特に問題ない。
・SAPPHIRE RADEON9800SE 128M DDR
 SAPPHIRE製の"RADEON9800SE"搭載のAGP用カードで、黒い基盤が使用されている。
 外部から電源をとる仕様で、メモリは表と裏にそれぞれ4枚のInfineon DDR-SGRAM HYB25D128323C-3.3(x32 DDR300MHz品)が搭載されている。
 3DMark03の報告を信じる限り、コア、メモリそれぞれの駆動周波数はCore 325MHz/Memory 500MHzであるようで、RADEON9800より低い値となっている。
 現在のところ、ATiのサイトにおいてあるドライバは(普通には)使用できず、SAPPHIREのサイトにおいてある物を使うことになる。RADEON9800SEドライバを使う限りは性能は低く、RADEON9500PROよりも見劣りするが、強制的にRADEON9800ドライバをインストールすることで劇的に性能が向上する(筆者環境では問題なかったが、動作を保証するものではもちろん、ない)。
 この基盤(実装部品の品位は良い)と同一のR300/350/360製品が見あたらないため、メモリの接続が256bitでソフト的に128bitに殺してあり、RADEON9800ドライバによって256bitとなるのか、そもそも128bitでしか接続されていないのかは確認できなかった(手元にRADEON9800があれば性能差があるかどうかで検証できたとは思うが)。

RV350/RV360 (RADEON family)
 R300コアを原設計として、130nmプロセス用に設計された廉価用コア。流れとしては、R200に対するRV250/280のようなものといえる。後に高周波数版としてR360が追加されたが、R360は同じ130nm製造でありながらもLow-K採用のTSMC社のプロセス"Black Diamond"での製造となっており、駆動周波数の伸びが著しい。
 ノート用など、幅広い利用範囲を想定したコアで、演算器の構成自体は丁度R300の半分、メモリは128bit幅のDDRとなっている。R300をRADEON9500相当になるように演算器を削り、製造プロセスを微細化して内容を若干改良したようなものと言えるだろう。
 3.3V系AGPのサポートがなくなったのか、AGP4X/8Xのみに対応した製品しか登場していない。
 カード製品としては動作クロック別にRADEON9600PROとRADEON9600が存在する。RV360搭載製品としてRADEON9600XTが追加された。
 製品の位置付け的にはnVidiaのNV31(GeForceFX5600シリーズ)に対応するが、ATiの場合はRV280がDirectX8.1ベースなので、ある意味NV34とも競合する。アーキテクチャの違いが大きいため速度比較は難しいが、基本的にRV350は万能に近いと言っていいのではないかと思う。

・SAPPHIRE ATLANTIS RADEON 9600 128M DDR
 RADEON9600搭載のAGP用カードで、ファンレス品。9600PROは空冷ファン搭載、9600はファンレスというわけではなく、9600であっても空冷ファンを搭載したモデルはあるので、ファンの有無を気にされる方は注意が必要だろう。
 AGP4X/8X対応の1.5V-AGP専用品で、MatroxのMillennium-Pシリーズと並んで、1.5V専用品の最初の世代にあたる。AGP4Xに対応しない、たとえば440BXやAMD750などのチップセットのマザーボードでは使用できないので、該当するユーザは注意が必要だろう。
 出力端子はD-sub15、DVI-I、S-Video。
 基本的にはLowProfileでないAGPのRADEON9600(/PRO)のカードは同様のレイアウトになっているが、VRAMのパッケージがTSOPかμBGAかによってメモリ部分のみ違いが出る(現時点ではATi純正のRADEON9600PROのみがμBGAのようだが)。ベンダによって実装部品の品位は異なるようで、SAPPHIREのカードではLicon製コンデンサ(おそらく安物)が使われている。
 画質は一般的用途用のビデオカードとして最高級であり、筆者はRADEON9700PROより良いと感じた。1280*1024程度ではELSAのGLADIAC534と大差ないが、さらに高い解像度を求めるならばこのカードの方が優れているように感じる。

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