3Dlabs

OpenGLアクセラレータを本業とする会社で、Oxygenシリーズで知られる。
Permediaシリーズでコンシューマーへの進出をはかったが、さほど目立った成功は得られていない。
Intergraphのエンジニアや製品群の移管を受け、3Dlabs元々の製品群OxygenとIntergraphのWildcatとが混在する。
Creativeに買収され、コンシューマー分野への進出が予定されていたが、現在の様子を見る限りこのプランは頓挫したようだ。
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PERMEDIA3
 前作PERMEDIA2の後継。
 AGP2X。
 明らかに時を失ってから登場したため、他の同期のチップと比較すると価格性能比は著しく悪い。
 基本的にはRIVATNT程度の性能。
 OpenGLになるとなかなかの力を発揮、というよりOpenGL用チップと見る方が正しいだろう。
 heidiなどのAPIにもハードウェアで対応する。
 RAMDACは内蔵で、TIコアの300MHz品。TVP3026-300PCEと言えないこともなく、ある意味この点の価値が大きい。

・3Dlabs PERMEDIA3 Create!
 チップ単体では外販していないため、これが唯一のPERMEDIA3ボードになる。(後に外販を開始、EONTronicsのボードは目撃)
 ボード自体は上位のOxigenVX1と同一である様子。細かなチップ仕様などがもしかしたら異なるのかもしれない。
 発色も含めて画質は良好だが、1600*1200では若干画質低下が見られる。

PERMEDIA2
 CAD/CAM系の3D分野(GLINTなどの系統)から出てPC主流域へとやってきた3DLabsの意欲作。
 商業的には大成功ではないにしても成功したチップといえる。
 AGP1X/PCI。
 DAC内蔵だが、このチップはTIとの共作的なものであり、TVP302x系の230MHzのDACコアを内蔵する。Permedia2のTIでの名前はTVP4020とかいう名前だったと思う。
 当時、nVidia RIVA128,ATI RageProと並んで三強と扱われもしたのだが、少なくともPCゲーム系3Dでは他の二つに大きく水を開けられた感がある。
 基本的にはゲーム用途ではRIVA128に若干劣るが、サポートしないファンクションなどが案外致命的なレベルで存在し、一世代前と同格程度の3Dイメージしか作成できないことが多い。
 OpenGLになると力を発揮する傾向がある。
 heidiなどのCAD系専用APIにハードウェア対応した珍しいコンシューマー向けチップでもある。
 DAC性能が優秀でGDIレベルの速度は充分に出ること、VRAMが8MB搭載できることから、Matroxや#9が得意とするような高解像度ビジネス環境への適性は高かった。
 高クロック版としてHがあるが、最近多いvというチップが廉価版なのか高速版なのかは情報不足で分からない(無印が83MHz、vが70MHzという説もある、ただしWindows2000のDAC認識が無印がTVP4020C、vがP2RDとなるため、いくらか変わってるのやも知れず)。ACPI対応という話もある。
 Windows2000標準ドライバはマルチディスプレイモードサポート。

・I-O DATA GA-PII8/PCI
 PERMEDIA2が最強だった頃のボード。
 I-O DATAらしい、基盤背面をGNDで保護した等長配線で引き回し、表に戻してフィルタを入れて外部に出すという引き回しになっている。
 画質はかなりの高水準にあり、1600*1200レベルでもあまり破綻しない上に発色も優れている。
 当時求められる程度の2D/3D性能はひととおりあったが、PERMEDIA2がRIVA128の前に少なくともコンシューマー路線では敗退したため、あまり正当な評価は得られなかったように感じる。
・EON Picasso P2V
 PERMEDIA2v。
 画質に関しては、低価格で得られるものとしては最高水準にある。コストをかけて作りこんだ性格の物ではなく、素直な配線とPERMEDIA2のDAC性能に依存した物と見える。
 比較的高め(230MHz)のDAC周波数とあわせて1600*1200を実用に出来る程度の品質はある。発色は良好だが、GA-PII8/PCIよりは落ちる。
 2D系処理能力は同世代としてハイレベルであり、IEスクロールが異様に遅い以外の欠点は見あたらない。
 反面、3Dに関してはRIVA128未満であり、期待してはならない。
・Melco WHP-PS8
 SGRAM8MB搭載モデルで、4MBモデルとしてPS4が存在する。
 無印PERMEDIA2搭載。
 9821にも対応し、そのためのDIPスイッチが搭載されている。
 BrooktreeやPhilipsのビデオエンコーダの類を設置できる空きランドがあるが、その空きランドが埋まった製品が存在するのかどうかは知らない。
 画質はPERMEDIA2カードとしては標準的で、高解像度の視認性と発色が高い水準で得られている。

P9/P10 family
 DirectX9を契機にメインストリームのグラフィックスチップ市場に復帰を志すベンダが数多く現れたが、3Dlabsもこの復帰組に含まれる。
 P10自体はコアテクノロジーとされ、チップ名称ではないのだが、コンシューマー用のP10コアによるVPU(VPUという単語は3Dlabsが使い始めた)がどういった形式で製品化されるか分からないので、ひとまずこうした分類をしておく。
 P10自体はDirectX9世代系の他のチップのようなプログラマブルなDSPなのだが、他社製品は限定的にプログラム可能であるのに対して、P10はフルプログラマブルであり、固定機能をほとんど持たない。
 他社チップはジオメトリ段に"VertexShader"というプロセッサ群を搭載し、"VertexShader"をプログラム可能とする程度に過ぎないが、P10は単に32bit単精度の演算器"VertexProcessor"を16個搭載するのみで、単純に16基のスカラプロセッサとして用いることも出来れば、これを4個束ねて"VertexShader"として利用(この場合はVertexShader4基になる)することもできる。これはレンダリング段も同様で、64個の"ShadingProcessor"を搭載するのみで、用法は規定されない。アンチエイリアスやディザ、フォグといった他社チップでは固定機能で提供されるような機能もプログラムによって提供される。
 設計自体はDirectX9の設計思想を強く意識していると思われるが、P10自体は固定機能ではないため、DirectX9世代といった〜〜世代の物であるといった区分はあまりふさわしくないと思われる。"ShadingProcessor"が取り扱えるデータ型が整数型であることから、DirectX9のPixelShader2.0にフル対応することが出来ない、のように演算器の構成によって出来ることと出来ないことが分かれてくるだけに過ぎない。その意味では今後新技術として登場する内容がドライバを書き換えるだけで対応できるかもしれないし、演算器の制約から不可能であるかも知れないし、演算器の速度が足りずに実用的でないだけかも知れない(そもそも3Dlabsにやる気がないかも知れない)。これはDirectXにしてもOpenGLにしても同様で、DirectX9やOpenGL2.0を意識して設計されただけに過ぎない、ともいえる。
 現状、OpenGL市場用としてWildcatVPシリーズが製品化されており、動作周波数によって、WildcatVP970、WildcatVP870、WildcatVP760の3製品がリストアップされている。VPUそのものとしては動作周波数以外の差はない。
 メモリバスは256bitのDDR-SDRAMインタフェースを持っている。DirectX9世代のフル機能のチップとして256bitは一般的である。
 AGP8Xに対応するとされるが、パッケージの記述やシステムに報告する値自体は4X(AGP SPECTIFICATION VER2を返す)を示す。もっとも、AGP8Xの環境を用意して試したわけでもなく、実際にどうなのかは環境が整った後でないと判断できない。
 RAMDACは10bit品を2つ内蔵している。資料がないのではっきりとは言えないが、このRAMDACは同一仕様品2つではなく、周波数が異なるように思われる。少なくとも現行ドライバでは選択できる解像度が異なる。3Dlabsの製品はTIのRAMDACを内蔵したことで知られるが、Wildcat系列の製品としてIntergraphの流れにあるとするなら、もしかするとTI系ではないのかも知れない。
 TMDSトランスミッタは内蔵せず、必要な場合は外付け品を使用する仕様となっている。2チップ利用することでDVI DualLinkが可能である。補足しておくと、これはデュアル出力の意味ではなく、通常のSingleLinkを2つ束ねて使用することで使用可能な解像度の上限を引き上げる機能の意味である(WildcatVPはSingleLinkで1920*1200@60Hz、DualLinkで2048*2048@60Hzのデジタル出力が可能なようである)。
 マルチモニタ機能自体は別解像度系スパン専用のようであり、これはWindows2000においても同様である。過去、MatroxのみがサポートしたWindows2000での別解像度スパン機能だが、大半のベンダがサポートするようになった今、普通の機能として定着するのかも知れない。
 ビデオオーバーレイの性能は低く、1280*1024以下の解像度でしかオーバーレイできない。また、マルチモニタ時にはさらにオーバーレイできる解像度の上限が低下する。
 後にP10をそっくり半分(演算器、メモリバスなど)にしたP9(WildcatVP560)が登場した。メモリバスの帯域減を補うべく、Slipstream Technologyなるメモリの圧縮転送がサポートされたが、これがP10でも使用できるのかどうかはわからない。

・3Dlabs WildcatVP870
 WildcatVPシリーズとして中堅のモデルであり、WildcatVP870 VPU、128MBのDDR-SDRAMを搭載する。
 AGP用。
 8層PCBでOS-CONではないが三洋製コンデンサなど高価な部品で構成されているが、CPUクーラー自体はA-OpenのGeForce4MXなどで見たのと同じような物が採用されている。
 出力端子はD-sub15ピンとDVI-Iで、DVI-D出力用にはSiliconImage社製Sil168CT64 TMDSトランスミッタが搭載されている。もう一つ搭載できるように空きランドが用意されているが、WildcatVP870はSingleLink用なので1つしか搭載されない。
 RGBのラインは自由曲線で引かれており、3端子ダイオードアレイが存在するのみでフィルタの類はない。画質は執筆次点で筆者が知るカードの中で最高だが、解析的で中立的な発色は地味に見えるかも知れない。アナログの出力であっても本命の端子はDVI側のようで、DVI-A接続だと2048*1536が出力できるが、D-sub側では1920*1200でしか出力できなかった(ドライバの問題である確率も高い)。
 OpenGLについては使用しないし分からないのでコメントしない。
 Direct3Dの機能は執筆時点(2002/8)のドライバではおまけであり、正常に機能しないことも多く速度も低い(たとえば、RADEON9000よりはるかに遅い)。マルチモニタ機能を有効にするとDirectDrawすら機能しない(当然Direct3Dも)など、少なくとも、OpenGL環境以外についてはドライバの完成度は非常に低い。あるいは、これについてはDrectX9待ちなのかも知れないが。
 2003年になって公開されたドライバではDirectX関係が大きく改善されているが、VertexShader1.1/PixelShader1.2と、DirextX9の機能は実装されていない。2Dですら動作に問題があるという点は相変わらずで、カード品質とドライバ品質のギャップは当面埋まりそうにない。
 発売当初はWindows98/Me用ドライバは存在しなかったが、後に公開された。筆者はこのドライバを使用していないので完成度については解らない。
 チップファンの騒音は大きめであり、また発熱自体も大きい。

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