S3

老舗で、ViRGE登場まではハイエンド市場に君臨していた。
ビデオチップにポルシェのナンバーをつけていた会社で、昔は3の文字は小さかったので、エスキューブドなどと呼ぶ人もいた。
一時期完全に衰退するが、Savage4によって再びメインストリームに帰ってきた。
S3の製品はRAMDACセパレート型ではIBM RGB52xやTI TVP302xなどの高級DACと共に使われることが多く、コア内蔵DACの品位も良好(S3自身もセパレートDACを製造していた)であったようで、Canopusや#9などからS3チップの高画質ビデオカードが登場してきた歴史がある。
DiamondMultimediaを買収したことにより、チップ専業からボードメーカ(というより総合会社)への転身、そしてVideoCard部門を打ち切り、と進んだ。
DiamondMultimediaはマイナーチップを採用してそこそこの品位のボードを仕立ててくれていた、マイナーチップ愛好家にとってありがたい会社だっただけに残念ではある。
ところが、最近になってグラフィックス部門がVIAに売却(S3-VIAに移管)され、S3という名称の旧DiamondMultimediaのような会社になってしまった。
後に、SONICblueと言う名前のGraphicsChipとは無関係の会社に変貌した。
Savage2000の後継チップがどこのブランドで発表されるのかが気になるが、私の感触としてはintelのようにChipset統合コア専業になってゆくのではないかと見ている。
筆者としてはS3-VIA系のVideoChipの流れを、続くかどうかは別にして追跡してゆくつもりではある。
webpage
SonicBLUE
VIA

86C928
 世界を革命するチップというものが存在する。
 これまでの業界の流れをそっくり変えてしまい、そのチップより前、後というような区分けにされうる存在。
 筆者が手に取った中で最初のそういった存在が86C928だった。
 先代の86C911/924、そして86C928はWindowsGDIに特化したチップとして登場し、今後のスタンダードとしてのスタイルを確立した記念すべきチップである。
 性能的にはこの時代のトップであり、標準的な手法では24bitモードのアクセラレーションが効かないという以外に欠陥らしい欠陥はなかったと言える。
 むろん、古めかしい存在であり、今となっては記念碑に過ぎないけれども。
 DACは外付け仕様。
 DualPortDRAM使用。

・Canopus PowerWindow928IILB
 A-Mateローカルバス(電気的仕様はVLバスに酷似)用のボード。
 SEC社製60nsのDualPortDRAMを2MB搭載。当時として標準的なSIPパッケージの1Mbitチップが使用されている。
 RAMDACはAT&T20C505-11、110MHz品と思われる。
 86C928チップとして異例な24bitでのアクセラレーションが動作し、9821用ボードとして後継の964LB登場まで最強を誇った。
 基盤のアートワークの特徴から明らかに964LBを手がけた人物の作と想像される。
 現在は使用できる環境を持たないので画質は昔の記憶に頼らざるを得ないが、良好であったという記憶はある。
 想像で語るならば9100PCI-2Mとほぼ同一傾向の画質ではないかと思われる。
・Canopus PowerWindow928GLB
 VRAMが1MBのIILBの下位製品。
 増設モジュールを使用することで2MBにすることが出来るが、同一の仕様環境とならないため、RAMDACが違ったのだろうと思われる。
 もう手元にないため詳しいことは分からない。

Vision964 (86C964)
 98C928の正常進化。
 GDI系の2Dの最適化に関してはほぼこの時代で完成を迎える。
 低価格化の波が見えてきた頃であり、メモリインタフェースの違う廉価版、Vision864がファミリーに存在する。Trio32/64もこのコアが元となって派生する。
 DAC外付け仕様。
 DualPortDRAM使用。64bit接続。

・Canopus PowerWindow964LB
 A-Mateローカルバス用のボード。
 このカテゴリにおいてこれを超えるボードは存在せず、A-Mate究極の形態を追求するならば避けて通れないボードである。
 DualPortDRAM2MB仕様で、4MBへの増設オプションが存在する。
 RAMDACはTVP3025の135MHz品
 VRAMは全品共通かどうかは分からないが、70nsのSamsung製DualPortDRAMが使用されていた。
 画質は最高水準にあり、鮮やかな澄んだ発色で、高解像度域でも破綻を見せないフォーカスの高さを持つが、製品仕様として1600*1200レベルの解像度を使用するための物ではない。
 基盤のレイアウトはかなり美しい。筆者は長く最高と思っていたが、すり込みによる部分が多分にあったようで、2001年現在で見る限りでは最高とは思わない。
 RGBラインの取り回しの癖がPowerWindow868PCIやPowerWindow9100PCI-2Mと通じる点が多く、おそらく同一設計者による物と思われる。
・Canopus PowerWindow964LB 4M NewEdition
 上の964LBに増設VRAM2MBがセットになった物。
 増設VRAMボード自体はPowerWindow964LB,964PCI(事実上生産されず、SNKに少数供給されたことは分かっている)と共通になっていて、筆者が手にした物は60nsのSamsung製DualPortDRAMが使用されていた。ちなみに、PowerWindow968やPowerWindow968PCIの増設VRAMとの互換性はない。
・SNK/Canopus NEO ACCELERATOR SYSTEM (写真)
 有り体に言えば幻のCanopus PowerWindow964PCI。Canopus製ドライバのみに記述のある幻の製品と思っていたが、現実に存在していてSNK社に供給されていた。基盤上にSNK社のロゴが見られる。
 筆者が手にしたカードのシリアルは9であり、極少量のみの生産であった可能性が高い。
 SEC製70nsDualPortDRAMをメイン基盤上に2MB、増設基盤上に2MBの4MB仕様で、増設基盤はPowerWindow964LBの2MB増設モジュールと互換性がある。ただ、筆者の手元のPowerWindow964LBの2MB増設モジュールは60ns品だったが、これは70ns品だった。
 RAMDACはTI TVP3025-135MHzで、これも964LBと共通。
 未使用ながらもNEC PC-9800系のD-sub15のコネクタ用パターンが存在し、フィルタ回路(ヒゲ取りダイオードをディスクリートに構成し、その必然はないが整然と配置する)やチップの配列の美的感覚(必ず整然と格子状に配列されている)など、964LBと同一設計者の作と思われる(他には928IILB,868PCI,9100PCI-2Mに同様の癖を感じる)。
 実用としてはCanopus製S3チップ用ドライバがそのまま使用でき、RAMDACパラメータの問題から汎用品より高画質になる。
 画質は964LBそのままであり、当然のように高画質。
 968PCIや9100PCI-4MのようなIBM製RAMDAC搭載製品より色の傾向は暖に寄る。
・NumberNine GXE64pro-4M
 PCI用の4MBのカード。
 DACはTVP3025の135MHz品で上のSNK/Canopus NEO ACCELERATOR SYSTEMと丁度同仕様となる。
 メモリはNEC製70nsが表面実装され、ソケットにはOKI製70nsが実装されている。
 年代を感じさせるごついカードで、Imagine系に見られるような優雅さはない。PCBの裏面にAT&Tの文字があり、AT&Tで生産されたという可能性もある。
 その裏面だが、切符をモチーフとしたシルク印刷が一面に施されており、非常に印象的。
 画質傾向だが、Canopusの外付RAMDACのものと非常によく似た傾向で、前述のNEO ACCELERATOR SYSTEMと非常に近い傾向で品位である。

Vision968 (86C968)
 Vision964にHardwareDCIサポートを組みこんだもの。
 基本的な性能においてはほとんど差がない。
 DAC外付け仕様。
 DualPortDRAM使用。64bit接続。

・Canopus PowerWindow968
 98x1汎用バス(C-bus)用のボード。
 C-bus用として最強ながら、チップパフォーマンスを生かすにはC-busが脆弱であり、その存在意義には疑問を感じる部分がある。
 バス接続自体はCanopus製のST298と言うブリッジチップが仲介しており、元々のコネクトはVLバスに準じた電気信号であると思われる。
 DualPortDRAM2MB仕様で、4MBへの増設オプションが存在する。この増設オプションは専用品であり、PowerWindow964LBの物との互換性はなく、PowerWindow968PCIとは別方式であり、当然これも互換性がない。
 RAMDACはTVP3026の175MHz品。
 画質は高水準にあり、鮮やかな澄んだ発色とフォーカス性能の良さが印象的である。
・I-O DATA GA-968V2/PCI
 不思議とハイエンドの香りのしなかった968ボード。
 BuleDAC搭載でPCI用、DualPoerDRAM2MB搭載。
 特に欠陥らしい欠陥もなかったのだが、所有する喜びが感じられないのは不思議だった。
 その後調べてみたことには、CARDEXからOEM供給を受けた物だと言うこと。持つ喜びがなかったのも道理か。
 他の968+BlueDACのカードと似た画質だが、他より精度は落ちる。
・Canopus PowerWindow968PCI
 PCI用。
 DualPortDRAM2MB仕様で、裏面に増設用ソケットが存在する。基盤化されたメモリボードを取り付ける仕様の物ではなく、DIPパッケージのDualPortDRAMを2MB分埋め込む仕様となっているため、同仕様のメモリチップで代用可能と思われる。
 RAMDACはIBM RGB526-220MHzだが、Vision968チップの仕様からか多色環境や1600*1200などの解像度では充分なリフレッシュレートが得られない傾向がある。
 画質はかなり良い水準にあり、澄んだ良好な発色とフォーカス性能の良さが印象的。
 RAMDACに与えるパラメータの問題で、Canopusドライバを使用した方が高画質になる。
・Canopus PowerWindow968PCI-4M
 上の968PCIの裏面の増設ソケットの代わりにDualPortDRAM2MBを表面実装した物。
 968PCIに2Mの増設メモリを実装した物と性能、機能面で特に違いはない。

86C805i
 Vision964と同世代の安物。
 筆者は一応使ったことがあるものの、具体的な記憶には乏しい。
 86C928を元にメモリインタフェースを改装した物であったと思われるが、詳しい仕様は知らない。
 FastPageModeDRAM使用。

・Canopus PowerWindow805i
 98x1汎用バス(C-bus)用のボード。
 値段の割にいい仕事をしていたという記憶はある。

ViRGE (86C325)
 いわゆる革命者のひとつ。
 86C928ほどの風格はないが、新しい風を起こしたのは確かである。
 メモリに廉価なEDO-DRAMを使用し、RAMDACを統合し、一応は3Dのコアも内蔵してきわめて廉価に販売された。メモリは64bit接続。
 S3の統合RAMDACの品位はATiと並んでおそらく高い部類に入る(3DLabsほどではない気はする)。
 2Dの速度はVision94xなどに匹敵し、廉価でDirectDrawの速度もあるということで、2Dチップとしての完成度は非常に高かった。
 これ以後、RIVA128登場までは、数少ない例外を除いて使いものになる3D性能を持たない。ただでついてくるおまけの3D機能ということでFreeDと呼ばれる世代の始まりであり、RIVA128の登場によって急に色あせる世代である。
 PCI仕様。

・I-O DATA GA-PG3D4/PCI
 PCI用。
 EDO-DRAMを4MB搭載するが、2MB分がメイン基盤、残りの2MB分をサブ基盤とした構造となっており、サブ基盤が付属しない2MB版も併売された。メモリはOKIの35ns品。
 I-O DATA製によく見られる、背面をGNDで挟む形でRGBの太いパターンが取り回されており、丁寧に作りこまれたカードと感じた。
 画質品位は実用充分と言ったところで、過度な期待をしない限りにおいては充分な品位といえる。
 PC-9821用として/98PCIモデルが併売されたが、ハードウェアそのものは共通だった。
・その他の有象無象のViRGE搭載ボード
 どれも似たり寄ったりの仕様で、特筆するところを感じない。

ViRGE/VX (86C988)
 ViRGEの上位とされたがVision968の改装系と感じた。
 220MHzのRAMDACを統合し、また、外付けも可能、後述のメモリ仕様も含めて意欲作ではあったと思うが、結果としては空回りであったように感じた。
 部分的にViRGEに劣ることはあってもはっきりとした性能向上を感じる点はないなど、性能的にも不遇であったと言える。
 DualPortDRAM使用で、バッファとしてEDO-DRAMを積むことができた。メモリは64bit接続。
 フレームバッファとして使用できるのはDualPortDRAMの4MBのみであり、正直中途半端なこの時期の3D技術のために積まれたEDO-DRAMは誤解を恐れずに言ってしまえばただの無駄であった。

・I-O DATA GA-PG3DVX8/PCI
 GA-PG3D4/PCIの姉妹製品。
 メイン基盤上に4MBのDualPortDRAM、サブ基盤上に4MBのEDO-DRAMを搭載しており、サブ基盤が存在しない物が4MBモデルとして併売された。DualPortDRAMはSEC製、EDO-DRAMはMosel製だったと記憶しているが、確証はない。また、速度は記憶していない。
 GA-PG3D4/PCIと同様の設計思想であり、また同等の画質品位であったと記憶している。
 PC-9821用として/98PCIモデルが存在するのも同様。
・DiamondMM Stealth3D-3000
 筆者はオンボードに2M、増設ボードに2Mで4M構成の物を入手したが、元々の構成が2Mで+2Mしたものなのか、本来4Mだったのかは不明。
 増設ボードには空きランドがあるため、さらに増設できるオプションがあったのではないかと思われる。
 画質は良くない。

ViRGE/DX (86C375)
 ViRGEの後継チップ。
 EDO-DRAM、64bit接続。
 2Dそのまま3D強化路線で、貧弱とされたViRGE,ViRGE/VXの3D性能を実用域まで高めようという努力は伺える。しかし、3D性能をより重視した、nVidiaやATi、3dfxやRanditionといった他社製品と競合可能な物ではなく、タダで3D機能が付いて来るという意のFreeDとされる世代の製品でしかなかった。
 初期は素直に売れ線として、後には廉価品の代名詞とされるほど数多く販売された。
 同系設計のViRGE/GXがあり、こちらは対応メモリがSDRAM/SGRAMとなる。このViRGE/GXファミリが後のSavageシリーズの原点となる。

・I-O DATA GA-PGDX4/PCI & /98PCI
 ViRGE/DXボードの基準としていいほど手堅く標準的なカードと記憶している。
 ありとあらゆる点で欠陥もないかわりに取り立てて優れた点も感じられなかった。
・Canopus PowerWindowDX & DX/4MC
 Canopus製でPC-9821対応であったことだけが筆者にとってのメリットだった。
 Canopus製だけあって画質はまともで速度も他の物より速かったが、ViRGE/DXは所詮廉売チップであり、廉売チップである限り性能優位はたかが知れているものだった。
 4MCは当時良く使われたPhilipsのキャプチャ用チップを搭載したモデルで、非搭載の物と基盤は共通で、したがって非搭載品は空きランドが目立つ。
 筆者に言わせるならばCanopusが最も輝いていなかった時期の愚作である。
 別に品物が悪かったわけではなく、Canopus製品としての品格を感じないだけなのだが。
・有象無象のViRGE/DXボードたち
 あまりにも多くの製品があり、筆者も数多く使ったがいちいち記憶していないしその価値も感じなかったので、特に記さない。

Savage3D (86C391)
 ViRGE/GX3。
 RIVA128によって市場が変革され、その中で敗者となったS3が再び立ちあがるべくイメージの刷新などの理由からSavageというブランド名を冠された。
 メモリバスは64bitのままながら、描画エンジンの128bit化など大きく手を入れられた意欲作ではあった。
 が、このチップは売れなかった。
 技術的遅れを挽回するためにテクスチャ圧縮(S3TC)を採用し、Microsoftに働きかけてDirectXに採用させるなど、この時期からS3という会社はどうも政治的な動きが強くなった。
 が、いきなりその遅れを取り返せるはずもなく、性能的には一世代分遅く、RIVA128より少し速い程度にとどまる。
 AGP2X,DAC内蔵。
 独自API、「Metal」を持つ。

・Hercules Terminator BEAST
 Terminatorの言葉どおり終わっているボードだった。
 しっかり、Herculesは倒産し、ボードの品位も低め、使用チップは製品ロットでないサンプルレベルとろくなことがなかった。
 まあ、1024*768程度までは充分実用だが、値段分の仕事をするものではなかった。
 SDRAM(SGRAM?)8MB。
・A-Open PA70
 Herculesとは対照的に優れたボード。
 SDRAM(SGRAM?)8MB。
 金のかかった絵ではないものの、素直に高画質。Savage3DのDAC周波数はそこそこ高いため、1280*1024あたりでの使用にまったく問題を感じない。
 だが、これに味を占めて他のA-Open製品を買うのは考えもので、実際筆者はA-OpenのSiS6326ボードのあまりの低画質に愕然とさせられた。

Savage4 (86C395)
 S3の復活チップ。
 AGP4X,DAC内蔵。
 最大32MBのSDRAM/SGRAMが使用可能。
 周波数などで4バリエーションあり、上からPro+(Pro143),Pro,無印,GTとなる。
 後に最上位としてXtremeが追加された。
 廉価版として他にLTがあるが、このチップの詳細は知らない。
 基本設計はSavage3Dを引き継いでいる。
 相変わらずメモリバスが64bit(GTが32bit)でしかなく同代の他社製品より劣るが、そのあたりはS3TCでテクスチャを圧縮すれば乗り切れると考えていたようだ。
 性能的には登場時から見て一世代前のTNTと同等なのだが、商業的にはまずまず成功し、最上位のXtremeはTNT2に迫る性能を持つなど、単なる安売り品でない力を持つ。
 基本的には低価格リテール市場向けの位置付けであるが、後にLTや無印が5000円帯や組込用に量販された。

・Creative 3DBlaster Savage4
 無印台湾品レベルのボード品位。
 Savage4 Pro+使用。
 AGP,VRAM32MB。
 画質はリテール品としては悪めで、DiamondやSTBなどのくすんだような発色であり、その上にじみなどが多い。1024*768で粗が見え、1280*1024では実用にならないと思える。
 S3がDiamondを買収してボード市場進出することへの報復として生産終了。
・NumberNine SR9 32M AGP
 筆者がCreative製品によって悪印象を持ちかけていたSavage4を見なおすきっかけになったボード。
 Savage4 Pro使用。
 非常にすっきりとした上品な画質。
 ドライバの完成度に少し難があるが、製品としての満足感は高かった。
 オプションとして液晶用Didital出力キットが存在するらしい。
・NumberNine SR9 16M AGP
 上の32MB品に対してさほど差を感じない。
・Diamond StealthIII S540 Xtreme
 これを書いている時点の唯一のSavage4 Xtremeボード。
 速度においてはまったく問題を感じない。
 画質は#9製と比較すると話にならないが、判読性は悪くなく実用域の画質性能は持つ。

Savage2000
 Savage4の後継。HardwareT&L、マルチテクスチャ処理やDVD再生支援の強化などが図られている。
 AGP4X,SDRAM/SGRAM。
 さすがに64bitのメモリインタフェースでは乗り切れないと理解したのか、メモリバスは128bitに強化されている。しかし、その効果を体感できることはあまりないように思える。
 製品登場当初はドライバの完成度が致命的に低く、HardwareT&LエンジンがDirectXから使用できるようになったのはかなり後になってからだった(チップのバグを吸収する必要があったからとも言われる)。もっとも、HardwareT&Lエンジンの性能は高いものではなく、これを利用しない方が性能優位になるケースの方が多い。
 様々な要因で売れなかったチップだが、最近になって超低価格チップとして出荷されているようではある。

・Diamond ViperII-Z200
 AGP用
 TV-OUT機能付き、SDRAM32MB。
 画質は上質で、光沢表現などに優れる画質傾向。
 S3に買収されてからDiamondのS3チップ製品はリファレンスドライバ=製品ドライバという点で、DiamondもS3もドライバの作りが甘いため、ドライバの供給には不安を感じる。
・I-O DATA GA-S2K32/PCI
 PCI用。
 DVIインタフェース搭載、SDRAM32MB。
 Windows2000のマルチモニタ機能への正式対応と9821への対応という点である意味貴重なボード。
 基本的な特性はチップの素性のままだが、ドライバの完成度はI-O DATAが手を入れるため期待できる。
 正直、画質はあまり良くない。
 筆者はRGBラインの短絡変造を行って使用したが、それでも一流どころのボードにはやや及ばない感がある。
・Inno3D Savage2000 /w 64MB
 AGP用。
 チップファンが付いていて、かつ64MBものメモリを積んだ、Savage2000らしからぬ仕様の廉価カード。
 画質はそこそこ良好。
 ただし手元のマザーボードでは動作しない物が多く、相性問題を起こしやすく見える。

ViRGE/GX2 (86C357)
 ViRGE/GXの後継チップ。
 RAMDAC内蔵。
 先代(ViRGE/GXの性能はViRGE/DXと大差ない)と比べてそう大きな性能向上もなく、基本的にはAGP1Xに対応した点が大きな違い。競争激化の時代にさらされたこともあり、商業的に明らかに失敗であり、S3の敗退を大きく印象づけた。従って、採用したベンダも多くはない。
 メモリはSDRAMとSGRAMに対応し、64bitで接続される。後にSGRAM固有コマンドは廃れてSDRAM同様にしか使われなくなるが、この頃はまだSGRAM用のコマンドがチップに実装されていた。
 確か、単体でTV出力に対応していた記憶がある。

・NumberNine 9FX-Reality334
 AGP1X、当時多かったNLXを意識したカードのカットがされている。
 SGRAM4MB。速度的には見るべき点はない。
 淡い発色の画でさほど印象的な画質ではないが、充分に高精度でかなり高水準の品位といえる。解像度1600*1200においても充分な精度が得られた。
 基板に透かしによるメッセージがあり、文面はYou better free your minf instead

Trio3D (86C365/366)
 ViRGE/DXかTrio64系かをAGP対応にした物と思われる。
 RAMDAC内蔵。
 名前に3Dが付いているのは何かの冗談かと思う。

・メーカ不詳ボード
 特に書くようなことがない。

Trio3D/2X (86C362/368)
 Trio3DをAGP2X対応にした物と思われる。

・メーカ不詳ボード
 特に書くようなことがない。

Trio64 Series
 有象無象の細かなファミリーがあるが、実用上どれも大差ないので、まとめて。
 PCI、DAC内蔵仕様。
 64はメモリバスが64bitの意味。32bitのTrio32という姉妹品がある。
 安物2Dチップの中では速い部類かも知れない。
 どうやら、以下のチップがあるらしい。

Trio64 V2/GX (86C785)
Trio64 V2/DX (86C775)
Trio64UV+ (86C767)
Trio64V+ (86C765)
Trio64 (86C764)

・有象無象
 念のため。製品名ではない。
 使った数も多すぎ、どれも大して良くも悪くもなく、正直どうでもいいので、まとめたのみ。
・NumberNine Vision330-2M
 Trio64無印。EDO-DRAM2MB。
 有象無象の物とは一線を画するので特記する。
 アートワーク自体は鋭角をそぎ落とした配線の手慣れた印象のもので、カードそのものの雰囲気は非常にシンプル。有象無象品とそれほど大きな違いはない。
 画質はかなりの高水準にあり、同社のReality334よりむしろ良く感じた。ただし、1280*1024/256色程度までがカード仕様からの実用限界である。
 特に透かしなどは見られない。

Vision868 (86C868)
 筆者は単品カードとしては使用したことがないので記述していないが、Vision864と言うチップがあり、これにHardwareDCIサポートを組みこんだものが868である。 別の言い方をするならば、Vision968の廉価版で、メモリインタフェースが異なる。
 メモリインタフェースが異なる、共通設計のVision864/964というチップがあり、HardwareDCIサポートを加えるとVision868/968となると考えるとわかりやすい。
 Vision968とコア設計自体は共通仕様であり、対応メモリはFastPageDRAMとEDO-DRAMであり、64bitで接続される。
 DAC外付け仕様。

・Canopus PowerWindow868PCI
 PCI用。
 2MB仕様であり、1MBit/45nsのEDO-DRAMチップを16個搭載する。
 RAMDACはS3製"SDAC"86C716であり、型番からは周波数を読みとることは出来ない。
 配線は同社のPowerWindow9100PCI-2Mと癖が似通っていて、同一人物の設計である推測できる。
 画質は良好であるが、1600*1200ではインターレースモードしか使用できない。

ViRGE/MX (86C260)
 ViRGE/GX(ViRGE/GXはViRGE/DXのSDRAM/SGRAM対応版)の世代のコアで、モバイル用とされる。
 LVDSトランスミッタを内蔵しており、その意味ではAurora64の流れといえるかも知れない。
 PCIとAGP1Xに対応しており、AGPとしては最初の世代に当たる。
 メモリバスは64bitでSDRAM/SGRAM用で、ViRGE/GX同様にEDO-DRAMも使用できると思われるが、筆者ははっきりしたことは知らない。最大容量は4MB。
 DuoVueというデュアルディスプレイ機能を持つようだが、筆者が使用したカードの出力コネクタは1系統のみであり、検証していない。Windows98を対象に開発された機能のようだ。

・名称不明 S3/ViRGE MX W/4MB
 興隆商事扱いの製造元の記されていないパッケージに入っているカードで、x32品のSGRAM2枚で構成された4MBのAGPカードである。
 当然ヒートシンクの類は存在しない。
 カード自体はLowProfileサイズだが、ブラケットが存在しないので基本的にはフルサイズとして使うことになる。
 画質は良くない。

Savage/IX (86C298)
 モバイル版Savage4と言っていいようなチップ。
 SGRAM(100MHz)を統合しており、4M、8M、16Mそれぞれのバージョンがある。チップ内配線ならばバス幅を大きく取れば良さそうな物だが、64bitでしか結節されておらず、したがって性能上のメリットは全くない(機能面としては実装面積の低減やらメモリも含めた低電力動作などのメリットは大きい)。実際、Savage4より全般に遅い。
 また、メモリを統合しない物をSavage/MXとして区別する(メモリバスのピンがあるからピン互換ではないだろう)。
 ViRGE/MX同様にLVDSトランスミッタを内蔵し、マルチモニタ機能であるDuoVue(DuoVue+というらしいが)をサポートしているが、筆者が使用したカードはRGB出力用なので調べていない。
 接続バスとしてはAGP2Xが利用できる。

・Mercurio S3 298/8M
 青い基板のビデオカードで、VRAMチップを外付けで持たないため一見ネットワークカードの類(NICにしてもワークメモリを持つカードもあるわけだが)のように見える。
 AGP用。
 Windows2000で使用したところ、筆者の環境では起動直後はDuoVueが出力先デバイスを640*480のLCDとして認識してしまい、表示領域640*480のままスクロールで高解像度動作する状態になってしまった(起動後にLCD表示をDisableにすると正常な状態になるが、再起動後には記憶されていない)。
 画質は特に良いとも悪いとも思わなかった。

ViRGE/GX (86C385)
 ViRGE/DXと同時に発表されたチップで、違いは対応メモリがEDO-DRAMに加え、SDRAM/SGRAMに対応している点にある。
 しかしながら、SDRAM/SGRAMを使用するメリットは乏しく(当時はEDOが廉価であり、SDRAM/SGRAMは高額だった)、ViRGE/DXが非常に多く売れたのに対して、ViRGE/GXはあまり見かけることがなかった。

・STB NITRO-3D/GX EDO
 後に3dfxに買収され、3dfxと共に滅んだSTB SYSTEMSのカードで、メキシコ製である。
 VRAMとしてEDO-DRAM(Winbond/35ns)が4MB搭載されており、ViRGE/GXとしての機能を活かした設計というわけではない。
 PCI用。
 淡くコントラスト感に欠ける絵ながらも解像度感は悪くない。1280*1024の実用性は得られるが、1600*1200はリフレッシュレートの面からも実用ではない。

Return2Menu