nVidia

後発にて最も成功したビデオチップベンダ。
RIVAシリーズ、GeForceシリーズと成功作を連続投入し、グラフィックス業界最大手となったが、DirectX9世代ではATiに押されて旗色があまり芳しくない。
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nV1
 nVidiaの第一作。
 PCI用。
 DACは外付けだが、nV1DACという同社製DACとペアで使われたため、元々ボードの種類がないこともありバリエーションはない。
 Direct3D制定前のもので、nV1専用タイトルがいくらか発表されて注目を浴びた。
 しかしながら、チップデザインとDirect3Dの乖離等からドライバのサポートが続かず一発屋的に終息。
 3Dに関しては専用タイトルのみの状態で、それに限ると登場時期を考えるとかなり高速。
 2Dもそれなりに高速であり、チップとしての完成度は高かったと思われる。

・Diamond Edge3D
 事実上これだけがnV1搭載として知られている(他にもあるにはあったが)。
 低周波数版はファウンドリのSGSのブランド名でSTG2000と呼ばれているが、基本的には同じチップデザイン。
 筆者も一応所有したことはあるのだが、手元にもう持っていないため、正確な型番や仕様がわからない。
 画質はダイヤモンド系とでも言うような、灰色感な解像度に振った(しかし実際に高解像度で優れた品質なわけではない)傾向に見える。

RIVA128 (nV3)
 nVidiaの第2作にて業界のありかたを一変させた名作。
 このチップを境にするようにビデオチップの3D性能は急激に上昇する。
 メモリバス128bit。
 過去の3Dチップのほぼすべての性能を軽く一蹴し、2D描画能力も高く、完全に他から抜きん出た存在だった。
 AGP1X/PCI。
 DACは内蔵で、おそらく前作のnV1用のnV1DACの系統のコアを内蔵したと思われる。
 3Dグラフィックの品位が高いとされるものに対しては劣り、VRAMが4MBまでしか積めないことが欠点といえば欠点であった。
 あいかわらず、ファウンドリはSGSで、NECなどはnVidiaでなくSGSと表記していた。

・Diamond ViperV330/AGP
 比較的低価格で流通したRIVA128ボード。
 発色は良くない。解像度のある画作りだが、それほど高い解像度まで実用に耐えるわけではない。
 ドライバは比較的高速で、トップ性能ではないものの確実に高い性能を出すことが強みだった。後期のドライバになればなるほど色より解像度感に振った画作りとなって行く。
・Canopus PowerWindowR128A GTV
 路線の迷走を続けていた感のあるCanopusがようやくトップ性能といえるだけの物を作った感があるボード。
 ビデオキャプチャ機能をつけるなど、性能志向より機能志向の強いボードデザインだが、よくチューニングされたドライバが他を圧する性能を出したことから注目を浴びた。
 画質もRIVAとしては比較的高画質の域にある。Canopusらしい作った感じのない自然な絵が出る。
・ASUSTeK AGP-V3000
 特に良し悪しの印象は残っていない。
 文字がつぶれた印象はないので、解像度感は良質だったのではないかと思う。

RIVA128ZX
 RIVA128の改良品。
 AGP2X/PCI用。
 RIVA128の数少ない欠点のAGP2X未対応とVRAM4MBまでという制限をなくしたものだが、RIVA128に対してほとんど速度面の改良がなかったため、商業的には成功はしなかった。

・Jaton Video-78AGP 3D
 ヒートシンクが付いていないのが特徴的かもしれない。
 比較的高解像度まで文字はつぶれないが、発色はよくない。
・GAINWARD製
 名称は忘れたが、緑色のヒートシンクを記憶している。
 画質は悪かった。

RIVA TNT
 RIVA128を内部に二つ持ったような構造をしていて、名称の由来はTwiNTexelとされている(まあ営業的なこじつけだろうが)。
 AGP2X/PCI用。
 RIVA128の順当な進化形であり、欠点の少ない良作。
 同世代の中では総合して最強だったと思われる。

・Canopus SPECTRA3200
 おそらく世界最強のTNTボード。
 MoSys社の超高速SGRAM(MDRAM系の技術らしいのだが)を搭載し、独自改良の施されたドライバで他のTNTボードに対して1ランク上の性能を出した。
 画質においても他のTNTボードより秀でていたが、後のSPECTRA5400以降のような他を圧した高画質といったものではない。
・Canopus SPECTRA2500
 SPECTRA3200の下位とされたが機能面を含めてアクロバティックなボードだった。
 初期モデルの画質調整がユーザに不評で、改修騒ぎを起こしたことがある。
 WitchDoctorという自社Voodoo2ボードからの出力をデジタル合成して画質低下を防ぐ端子が存在する。
 性能はSPECTRA3200譲りで、わずかにSPECTRA3200に及ばないといった速度。
 筆者は調べたことはないが、リファレンスドライバでは動作に不備があるらしい。
・Canopus SPECTRA3200PCI
 SPECTRA3200のPCI版.....ではない。
 3200のような特殊メモリ仕様でなく、通常のビデオメモリで、2500のような変な機能もないシンプルなボード。PCIであることからセカンドモニタ用としての価値が高い。
 画質はSPECTRA3200同様。
・Diamond ViperV550
 筆者は旧製品として廉売されたときにバルクで入手した。
 特に目だった欠点のない標準的な品質。
 画質はDiamond製品らしい、発色のよくないシャープな絵。解像度を上げると眠い画になる。
 バルクの初期モデルはヒートシンクのみで、後期やリテール品にはファンがついていたらしい。

RIVA TNT2
 RIVA TNTの大幅な改良品。
 AGP4X用。
 RIVA TNT自体は製造プロセス0.25ミクロンを想定して作られたが、Fabの条件から0.35ミクロンが使われた経緯があり、真のTNTとされる0.25ミクロンものが期待されたのだが、nVidiaは0.25のFabに移る前にチップに大きめな改修を施したため、別のチップTNT2として誕生した(余談ながらnVidiaの製品名は名が体をあらわしているため、そうでない3dfxと比べて筆者は好感を持っている)。
 関係としてはRIVA128-RIVA128ZXに似ているが、はるかに改良の度合いは大きい。
 チップの内容としては正常進化で、順当に高速化されている。
 高クロック版としてTNT2/Ultraというチップがあるが、違いはクロックだけであるため、まとめることにする。
 後に、無印とUltraの中間としてProが追加された。むしろ後継という位置づけに近く、発熱がかなり減少している。
 同世代のVoodoo3と比較されることが多いので筆者もいくらか書かせてもらうが、筆者としてはTNT2に軍配を上げたい。
 Voodoo3についてはいずれ書くが、基本的に現時点のゲーマーに必要とされる機能だけを備えた限定的な仕様の製品であり、総合して見る限りTNT2の方が優れると筆者は考えている。
 他のチップでもそうだが、nVidia製RAMDACは特性が悪いようで、いかに高品位な基盤設計を行っても発色面ではあまり良好な結果は得られないようだ。

・Canopus SPECTRA5400 PremiamEdition
 おそらく世界最強のTNT2/Ultraボード。
 SDRAM32MB。
 フィルタの精度をモニタによって二択できたり、アナログ回路を別基板を起こしてブリッジして信号の品位を守るなど、贅沢な仕様になっている(これを利用してBNCコネクタの出力オプションがあるが、筆者はそれを買う前に売却してしまった)。
 ドライバの完成度、画質含めてきわめて満足度の高い万能系ボードで、他のTNT2/Ultraボードに対して1クラス高い速度を持っている。 筆者としては今まで使ったボードの中で最も満足度が高かった。
 SSH-TypeBについてはSPECTRA8400(GeForce2GTS)の項参照。
・Leadtek WinFast3D S320II
 日本でもっとも速く流通したTNT2ボードと記憶している。
 画質は比較的良好で、VRAM32MB。
 液晶ディスプレイ用にDVI端子があった気がする。
 数あるTNT2ボードの中で特に目立った点はなかったと思う。
・Canopus SPECTRA L1200
 TNT2、SDRAM16MB。
 東芝用OEM品がバルク流出した物という話だが、筆者が手にした物はCanopusBIOSでなくTNT2汎用BIOSであった。
 ほとんどのTNT2カードはチップファン搭載のヒートシンクだが、このボードはヒートシンクのみである。後期のシュリンクされたTNT2PROはヒートシンクのみのモデルが多いが、ヒートシンクを外してマーキングを見る限りはTNT2無印だった。TNT2PRO相当にシュリンクされたTNT2ということもあるかもしれない。
 配線自体はLVDSトランスミッタが取り付けられており、DFP出力可能になっているがコネクタのみ存在しない(実装してやれば動くと思われる)。東芝用OEM品にはコネクタはあったようだ。
 Canopus製カードだがDFSやSSHは未搭載である。ただしフィルタ回路の形は昔のセパレートRAMDAC自体の物と全く同じでディスクリート構成のダイオードアレイも健在である。
 画質はファインフィルタの他のCanopus製品と比べて遜色ない。SPECTRA3200などより随分良い。
 Canopus製ドライバが使えるという話もあるが、BIOSのためか筆者の環境では利用できなかった。

Vanta
 TNT2の廉価版。
 AGP4X用。
 違いはクロックが低いこととメモリバスが64bitに限定(オンボードとして使うことを想定しているため、128bitのメモリバスを持たない)されていることである。
 帯域の狭さとクロックの低さから性能はTNTに劣るとさほど高いものではないが、OEM向けにnVidiaが参入したことの意義は感じる。
 最近よく見るVanta-LTというチップは、むしろTNT2-M64と呼ぶべきな気がするが、両者に本質的な違いはないので、どうでもいいような気もする。

・GAINWORD CARDExpert VANTA
 強い印象は何も残っていない。
・Jaton Video-88PCI-16
 珍しいPCI用のカード。16MBのSDRAM搭載。
 画質も悪くないという程度には出る。

GeForce256
 GPUと称して登場したビデオチップ。開発コードNV10。
 AGP4X用。
 256といっても256bitバス接続というわけではなく、DDR-SDRAMを使用することで従来の128bit接続のメモリの倍の速度が出るという意味。
 従来品と異なり、Hardware T&L性能をもってして性能向上を図るというスタンスで、これを利用しないときの性能も過去ほどでないにしてもそれなりに向上している。
 位置づけとしては万能機であり、すべての用途に対して平均を超える点を出し、一般的な性能評価にかかる点に関しては同世代のものの中で群を抜いた性能を誇る。

・Leadtek WinFast GeForce256
 おそらくはnVidiaのリファレンスデザインで基板を起こしたと思われる、きわめてスタンダードなボード。
 画質も水準程度は出ているが、nVidia系特有の砂っぽさがある。
・Canopus SPECTRA7400DDR
 infineon製のDDR-SGRAMを搭載したモデル。
 通常のメモリを使った物に対して明らかに性能上のアドバンテージがある。
 SPECTRA5400PE同様にSSH採用であり、画質重視の設計。
 AGPのみでの電源供給では不安があるということで、内部配線用の別系統電源コネクタを持つ。
 画質は良好で、解像度を上げても劣化せず、発色も良好な部類であり、GeForce256の内蔵DACとしては望みうる最高級。
 SSH-TypeBについてはSPECTRA8400(GeForce2GTS)の項参照。

RIVA TNT2 Model64
 TNT2の廉価版。一般にM64と呼ぶ。
 AGP4X用。
 違いはメモリバスが64bitに限定(オンボードとして使うことを想定しているため、128bitのメモリバスを持たない)されていることで、Vantaの高速版と言える。
 帯域の狭さから性能はTNTを何とか超える程度であり、VantaがOEM市場で不評(ネームブランドや速度の低さ)であったため投入された感がある。

・DCS WNM64-S31
 32MB仕様。
 青い基板が特徴的だが、性能面での印象はない。
 画質はあまり良いとはいえず、1280*1024で画質に滲みが表れる。
・メーカ不詳 SG-R64A32
 32MB仕様。
 上のボードより画質は良いがとりたてて良いものでもない。
・ELSA ERAZOR III LT-A32
 32MB仕様。
 画質は良好な部類だが、一流というほどではない。
GeForce2 Series(/wo MX)
 GeForce256の後継。開発コードNV15。
 AGP4X用。
 全作の順当な進化であり、TNT>TNT2のような、機能の微修正/追加と動作クロックの向上がメインである。GeForce256に関してはHW-T&Lを使用する場合より高速CPUを使用した方が高性能となる現象が起こっていたが、GeForce2GTSに関しては「なんとか」T&Lエンジンの方が優位であるようだ。
 GTSの名の由来はGigaTexelからということである。
 後に、GeForce2MXで取り入れられた機能を付加したGeForce2 Proと、さらに高速化させたGeForce2 Ultraが投入された。
 GeForce3Tiシリーズと同時に投入されたGeForce2TiはProを若干上回る性能で、その後継といえる。チップデザインそのものに変化はない。

・Leadtek WinFast GeForce2
 GTS、DDR-SGRAM32MB。 nVidiaのリファレンスデザインそのままのGeForce2ボードであり、Canopus以外のすべてがそうであることから、GeForce2ボードはほとんどこれとほぼ同じ特性となると思われる。
 画質は水準であり、DiamondMMや3dfxのボードと大差ない。1280*1024程度までは実用に耐えるが、それ以上の解像度用としては推奨しない。全体に砂っぽいような絵。
 筆者はすでに売却してしまったのでこれ以上は詳しく書けない。
・Canopus SPECTRA8400
 GTS、DDR-SGRAM32MBモデル。SSH採用であり、画質重視の設計。
 AGPのみでの電源供給では不安があるということで、内部配線用の別系統電源コネクタを持つ。
 リファレンスデザインそのままの他のGeForce2GTSボードの濁ったような画質と比較にならない澄んだ画を出す。高解像度であってもあまり画質低下を起こさない。1600*1200以上でも実用に耐えうる。しかしながら、高級RAMDACの発色には及ばない
 SSH-TypeBという出力コネクタを5BNCにするオプションがあり、専用オプションとされる5BNCケーブル(BB75)が存在する。これらを使用することでモニタへの信号の伝送特性の改善が可能であり、伝送系が問題で起こっていた画質劣化に関しては改善が見られる。
 筆者の感覚としては、水平同期周波数90KHz程度までの信号であればSSH-TypeB+BB75による改善はほとんどない。90KHz程度までならEIZO V30ケーブルでも実用上充分な伝送特性があるように思える。90KHz以上、特に100KHzを越える領域ではEIZO V30ケーブルに対する優位がはっきりと現れ、モニタがどこまで追従するかに依存するが、筆者の環境(SONY GDM-F500使用)では2048*1536@75Hz(119KHz)、1800*1440@77Hz(115KHz)が実用になる。
2048*1536@75Hz(119KHz)では若干画質の低下が見られるが、これの原因がどこにあるのかを調べるすべがない(RAMDACをオーバークロックして出力しているため、この周波数での使用は本来行えない)。
・Canopus SPECTRA8800
 Ultra、DDR-SGRAM64MBモデル。SSH採用であり、画質重視の設計。
 AGPのみでの電源供給では不安があるということで、内部配線用の別系統電源コネクタを持つ。
 発熱に対応してメモリとチップに銅板がはられている。
 SPRCTRA8400と同様にnVidiaチップとしては最高レベルの画質。
・玄人志向 GF2TI-AGP64AS
 名前通りそのままの製品で、AGP用GeForce2Ti、DDRSDRAM64MBのカード。
 PalitのOEMではあるが、Palitでのモデル名は調べられなかった。
 ファン付きのヒートシンクを搭載し、後で貼ってくださいとばかりにメモリ用ヒートシンクが添付されている。
 EIZO T761でしか視認していないが、画質は充分良好と感じられた。

GeForce2MX Series
 GeForce2GTSの廉価版。開発コードNV11。
 AGP4X用。
 当初GeForce2MX(以下MX無印)が投入され、後にリプレースする形でMX100,MX200,MX400が投入された。
 MX無印とは、GeForce2GTSの描画パイプラインを半分にし、DDR-SDRAMではメモリバスをGeFoece2GTSの半分の64bitまでという、テクセル数とメモリ帯域をわざわざ半分にするという「低速化」処理を施した、intelにとってのCeleronのような「手抜き商品」であると言える。ビデチップを高価格化することによって失うボリュームゾーンに対して数を売るためのきわめて政治的な製品であると言わざるを得ない。
 性能としては、GeForce2GTSやGeFoecr256(DDR-SDRAM)に対して明らかに劣るものの、GeForce256(SDRAM/SGRAM)より速く、開発力の劣る他社の主力製品より速いというきわめてコストパフォーマンスに優れるチップであり、CPU市場がそうであったように、技術力が劣る他社が高額で自社チップを売ることを不可能にし、業界の寡占化を進めることになると筆者は予測する(CPU市場よりなお悪いことに、下層の製品にはチップセット統合グラフィックスとの競合もある)。
 そういう意味で、筆者にとっては非常に出てほしくなかったビデオチップである。
 また、このチップはMatroxのDualHeadのように、2画面出力の機能を持つ。
 MX100,MX200,MX400はMX無印をリプレースする形で投入された後継チップである。
 MX400はMX無印と同一設計であり、製造技術の進歩などで高速化した物といえる。2GTSに対する2Proのような位置づけといえるだろう。
 MX200はMX無印のメモリバスを64bitに限定し、DDR-SDRAMへの対応を削った品物である。64bit限定ということなので、おそらくピン数も削減されていると思われるが調べていない。使用した感じでは2Dも含めて明らかにMX無印より遅く、あまり魅力的には見えなかったが、かなり低価格なので値段なりと言えるのではないだろうか。
 MX100は32bitに限定した物で、さすがに性能が低すぎるのかDDR-SDRAMが使用可能になっている。メモリが32bit接続であるため、かなりピン数が少ないと思われる。TNT2M64系をリプレースする目的で投入したようだが、低性能と基盤再設計などの費用を嫌われて事実上滅んだようだ。

・PROLINK PixelView GeForce2 MX
 MX無印、SDRAM32MB。
 nVidiaのリファレンスデザインそのままのGeForce2MXボードであり、Canopus以外のすべてがそうであるらしいことから、GeForce2MXボードはほとんどこれと同じ特性となると思われる。
 画質は水準程度は出ており、GeForce2GTSの一般的なボードよりもむしろ良い。
・Canopus SPECTRAF11
 SDRAM32MBモデル。SSH採用であり、画質重視の設計。
 おそらく世界初の独自設計基盤のGeForce2MXボードで、他のSSH採用のボード同様に非常に高画質。GeForce2MXボードにしては珍しく、冷却ファンを装備している。
 これらの豪華な設計のため、他のGeForce2MXボードに対して1.5倍程度の価格だが、性能でなく品質を見る分ではこうしたボードの存在意義は高いであろう。
 SPECTRA8400/7400シリーズのような外部電源コネクタを持たないが、これはボード自体の消費電力がさほど多くないため。
・SUMA PLATINUM GeForce2MX SIF TypeB
 MX無印、SDRAM32MB。
 CanopusのSSHを模したと思われる、SIFなる橋架状基盤を介してRGB信号を外部に出力している。このTypeBは、TwinViewタイプであり、D-subコネクタ2つをSIFで出力する構造になっている。
 CanopusのSSH同様に相互交換可能な汎用性を持つが、SSHはフィルタ部をメイン基盤に持つのに対してSIFは橋架状サブ基盤に持つ。
 SIF橋架状基盤を取り外して眺めてみたが、CanopusのSSHが極太の等長配線の自由曲線ラインで取り回している、疑似ジャンパ配線(プリント基板上の配線というのは、ディスプレイケーブルなどの同軸線に対して伝送特性が悪く、これ避けて原信号のまま出力しようと望むなら、VGAコネクタとRAMDACとの間の距離を近づければよいのだが、最近のRAMDAC統合タイプではそういった配線上の自由はなく、可能な限りRAMDACから近い位置で同軸線レベルの伝送特性を持った伝送経路と接続したいがためにCanopusは疑似ジャンパ配線たるSSHを採用したと筆者は見ている)であるのに対して、これは細い配線で普通の材質のプリント基板上によく見る普通の形のフィルタ回路を構成していて、SSHのような画質へのメリットがあるのかどうかかなり疑問を感じた(伝送特性の悪い部分を短くしたいという意図は少なくとも全く存在しない)。
 ブラケットやコネクタ部、チップヒートシンクが金メッキされていて、空冷用のファンがクリアカラー、レジスト液が黒いため基盤が黒い。など外見的なアピールは強い。
 ただし、コネクタはともかくブラケットの金メッキは性能への関与はなく、クリアファンは通常の黒い物に対して材質面で有利になる材料はなく、ヒートシンクの金メッキは意味不明(アルマイト加工の方が放熱に有利)と、設計の理念を疑う面が多く見られる。
 画質に関してはCanopusどころか、PROLINKのGeForce2MXより下と感じた。良くも悪くもない感じ。
 正直、ただの見かけ倒しボードであり、SSHを模倣しながらも最も大切な部分を模倣しなかった、見目の良さ以外の要素が欠落したボードと筆者は考えている。
・Asmart Magic GeForce MX200
 MX200、SDRAM32MB。
 玄人志向ブランドでGF2MX200S-AGP32として販売されている物でかなり低価格で販売されていた。
 赤い基盤のカードで、TMDSトランスミッタの空きランドがあり、DVI付きのカードがバリエーションモデルとして存在すると思われる。
 画質はそこそこで実用性と言う点では悪くない。パターンを見る限りRGBの配線には一応気を使っているように見えるが、徹底はしていない。
 チップファンは付いているが耳障りになるようなレベルの音はしない。
 速度はMX無印などより明らかに遅く、正直、単品カードとしての魅力は余り感じない。

GeForce3 Series
 なにやら区分が面倒になりそうな新製品が用意されている様子だがとりあえずNV20ベースのチップということで区分することにする。
 GeForce3はNV20と呼ばれる開発コードで開発されたチップで、nV1,RIVA128,GeForce256と今まで3種類の大きな変容があったコアに続く新コアで、本来GeForceの名を冠するのはふさわしくないと言える。
 AGP4X、DDR-SDRAM仕様。
 特徴はプログラマブルなVertexShaderに代表されるPure HW T&LとされるTCL段、とPixelShaderに代表されるレンダリング段のユニット「nfiniteFX Engine」で、DirectX8の仕様策定と共同作業で開発されたGPUであり、Microsoft X-boxプロジェクトと密に関係した、ある意味専用APIとしてDirectX8を利用する専用API特化コアといえる。
 その意味従来互換部分に関してはGeForce2系と大差なく、DirectX8 APIの普及のための布石といえるだろう。その意味GeForce3そのものはその存在意義を示す時期にはすでに時代遅れになっていることがはっきりしている、ある意味買い換えとしては購入意義の薄いチップかも知れない。
 ただ、カード製品付属CD-ROMに含まれるカメレオンなどのデモのあり方を見るに次の時代はこうあるべきだ、という強力なメッセージが感じられ、技術サンプル、技術玩具としてかなりおもしろい物だと感じた。
 もっとも、DirectX8 API自体はX-box用APIと言えるため、PCだけを見て設計された物ではないのは明らかであるが。

・Canopus SPECTRA X20
 DDR-SGRAM64MBモデル。SSH採用であり、画質重視の設計。
 AGPのみでの電源供給では不安があるということで、内部配線用の別系統電源コネクタを持つ。
 発熱に対応してメモリとチップに銅板がはられている。
 SPRCTRA8400と同様にnVidiaチップとしては最高レベルの画質。
 ファンの音量はSPECTRA8800などと比べるとかなり抑えられており、このクラスの製品としては静かな部類であると言える。

GeForce4MX Series
 開発コードNV17として開発された、DirectX7世代のGPU。
 AGP4XまたはPCIバスに対応する。
 nV15であるところのGeForce2コアを元に派生したと思われ、性能もまたGeForce2を小規模に改良したものにとどまる。
 その意味で、GeForce4MXという「4」の付いた名称はマーケティング上の物でしかないと言える。筆者はこの命名に対して好意的になることは出来ない。
 GeForce4MXシリーズには460,440,420と3製品があり、460,440の差は動作周波数の差のみである。460/440は128bit幅のDDR/SDR-SDRAMメモリインタフェースを持つが、420はSDR-SDRAMのみに対応(実際にはDDR-SDRAMにも対応しているようだが)した64bitのメモリインタフェースであり、この点で発生する性能差は大きい。
 128bit幅のDDR-SDRAMを持つ廉価版チップとしてはATiのRV200コアに続く物と言え、これを書いている現在登場寸前であるSiS Xabreシリーズなども含めて廉価品でDDR-SDRAMを搭載するのが当然といった流れになるのだろう。おそらくSDR-SDRAMとDDR-SDRAMの調達原価の差がほとんどなくなってきているのだと思われる。
 他に、GeForce4MXの特徴としてはLightspeed Memory Architecture IIと呼ばれる圧縮、選別転送を軸としたメモリの実効帯域向上技術が盛り込まれていること、アンチエイリアシング時のパフォーマンス強化技術であるAccuview Antialiasingが組み込まれていることが挙げられる。
 地味な特徴ながらも、RAMDAC、TMDSトランスミッタをそれぞれ2つ(!)内蔵し、nViewと呼ばれる、従来のTwinViewを改良した2画面制御機能を持つ。これはMatrox HualHead(DVD-MAXなどの機能がある)、ATi HydraVision(Theater Modeなどの機能がある)といった競合技術が高機能化するのに対する対抗技術と見ることが出来るだろう。
 ただ、私見ながら旧製品のGeForce2Tiと差別化できる点はこれらの地味な点でしかなく、GeForce3シリーズを含む旧製品が値下がりしている現在、GeForce4MXシリーズの費用対効果には疑問符を付けざるを得ない。
 なお、執筆時点(2002/6)ではintel i845/B-step、VIA KT266Aチップセットとの間に相性問題を抱えており、起動不能となるマザーボードが多くあるようだ。後にBIOSの改修などで対応されるかも知れないが、注意を喚起しておく。
 後にnV18(単に8Xの意味で8を数字に入れただけなのだろうが)として、AGP8X対応の440(GeForce4MX440 with AGP8Xという冗長な名前が付いているが、単に440-8Xでいいだろう)が追加された。

・MSI G4MX440-P
 DDR-SDRAMを64MB搭載したGeForce4MX440搭載カード。
 映像出力コネクタはアナログRGB(DSub15)を2系統。
 MSIらしい赤基板で、ヒートシンクは金メッキでファンは透明と外見アピールは強い、普通の性能のカードである。
 ヒートシンクの横にサーミスタが付いているが、この情報がどこで使われるのかは知らない。DualBIOSなるジャンパーピンについてもその効能は分からない。
 画質は良好で、充分実用域にあると見える。セカンダリ側のコネクタの画質品位もプライマリ側と同様で、マルチモニタ目的としての実用性が高い。

GeForce4Ti Series
 開発コードNV25として開発された、DirectX8世代のGPU。
 AGP4Xに対応する。
 駆動周波数別に上から4600,4400,4200の3製品があり、速度以外の差は特にない。
 後にAGP8X対応品としてNV28にアップデートされた。NV25とNV28の間で有為な差はないようで、項を分けて記載する必要もないと感じたためまとめて記載することにする。
 基本的にはGeForce3の順当な改良品で、GeForce2シリーズが改良されてGeForce4MXとなった流れに似る。RAMDAC、TMDSトランスミッタの各2系統集積など、GeForce3では性能向上のみ力が割かれたのに対して、GeForce4Tiでは完成度に重点が置かれた感がある。これはATiにおけるR200とRV250の関係に似ている(RV250は後継ではなく廉価品なので、完成度は向上したが性能は低下している)。機能面に関してはGeForce4MXで出来ることは一通り可能となっている。
 GeForce4Tiの新機能としては、VertexShaderを倍増(1から2へ。もっとも、ATi R200も2なのだが)させたことと(その効果を見るにはDirectX9を待たねばならないようだが)、PixelShaderをDirectX8.1系のver1.3としたこと(その他の機能強化も含めたShader系機能をnfiniteFX-II Engineと呼ぶ)、アンチエイリアシング時の速度向上、他、順当に性能改善されている。
 基本的には、DirectX8世代としての最高級性能のチップ(AGP8X対応の後継品が出るならそちらが最高になるだろうが)である。製造技術の向上によって駆動周波数も伸びており、結果としてGeForce3から1世代分の性能向上があったかというと疑問だが、有為な差が得られる程度の性能向上は果たしている。
 後にNV28(単に8Xの意味で8を数字に入れただけなのだろうが)として、AGP8X対応の4200(GeForce4Ti4200 with AGP8Xという冗長な名前が付いているが、単に4200-8Xでいいだろう)が追加された。同様に、4800(名前に反して4600の8X版である)、4800SE(同:4400の8X版)が追加された。はっきり言って命名ルールに統一感がなく非常に見苦しい(「Athlon4」なる場当たりなハズカシイネーミングをしたAMDに通じる)。

・Canopus SPECTRA WX25
 Ti4600搭載、VRAM128MBのAGP用ビデオカード。
 SPECTRAシリーズのフラグシップとして、過去の製品群にあった特徴は一通り備えているので、過去からの違いだけを記述する。
 大きな違いはマルチモニタ(nView)への対応で、橋架状基板が2系統分のRGB出力に対応した物になっている。電源部を別基板(APS 4.0)とし、その基板を排気ダクトとして利用する設計思想(Exhaust Control Structure)になっており、結果として電源部基板の面積分、基板が短くなっている。メモリチップの発熱が低減したことから、過去のように銅板で覆うような設計とはなっていない。
 画質性能は過去のSPECTRAシリーズと特に違いは感じない。セカンダリ側はSSHによるフィルタ特性の変更には対応しない(Fineモード固定)。
 ファンの騒音は抑えられている部類であり、それなりに静音化した環境以外では意識されることは少ないと思われる。

GeForceFX5800 Series
 開発コードNV30として開発された、DirectX9世代のGPU。
 130nmプロセスで製造され、1億2,500万トランジスタを集積しているとされる。
 AGP8Xに対応する。
 駆動周波数によって5800ultraと5800と区分される。NV30コアによるOpenGL-WS用のQuadroシリーズもあるが、GeForceFX5800より駆動周波数が抑えられている。
 同社初のDirectX9における基本的な仕様を一通りサポートした製品であり、同社がCineFX Engineと呼ぶShaderユニットでは、VertexShader2.0、PixelShader2.0がサポートされている。PixelShaderにおいてはATiのものがいかなる精度のものも24bit浮動小数点に丸めて実行するのに対して、12bitINT,16bitFP,32bitFPと個別に対応できる設計であり、nVidiaのみがPixelShader2.0をフルにサポートしているという言い方も出来るだろう。
 演算器の詳しい形態はnVidiaが資料を公開していないようではっきりしないが、3DlabsのP10のように各演算プロセッサは用途を固定されないままに配置されており、どうやらPixelSgaderにおいては16bitFP*8基、INT*4基が実装されているようで、16bitFPのユニット2基を利用して32bitFP演算を行うようだ。VertexShaderの演算器の総数については資料がないが、多数の演算ユニットを含む1個の大きなVertex Shaderが搭載されていると言われており、その用法や演算ごとの編成の自由度はかなり高いものと思われる。
 Shaderの強力さに引き替え、ハイオーダーサーフェイスへの注力は見られない。DirectX9の世代ではテッセレータによるD-MAPはMatrox方言で終わることになるのだろう。
 VRAMとしては初めてDDR-II-SDRAMがサポートされている。DirectX9世代のハイエンド品としては128bit接続と狭幅な接続となっている。NV30を短命たらしめた後継のNV35が256bitをサポートしているあたりは、結果としてこの判断は誤りだったのだろう(DRAMの粒度問題や配線の複雑化を考えると128bit DDR-IIは低廉となった後にむしろ普及機用として評価されることになると筆者には思われる)。
 非常に明快で強固な設計思想の元に、教条主義的に作られた「美学の結晶」とでもいえるプロセッサで、Shader世代のGPU(3Dlabs/ATi的にはVPU)はこうあるべきだ、という哲学が透けて見える。オフラインCGのために32bitデータタイプが必要といった広報があるように、PC(実質ゲーム)向けだけでなくオフラインCG用サーバでの運用なども想定されている。
 命令セットにおいてもDirectX9におけるShader命令セットでは不十分として、独自の命令群を含む開発ツールCgを推進する(ただし、CgはnVidiaチップ専用というわけではない)。NV30に限らず、NV31、NV34のCineFX Engineはすべて同等の拡張された命令セット、長いShader命令をサポートしており、ゲームにおける実用性は分からないが、すべてがGeForceFXを冠する同一シリーズであることを強くアピールしている(蛇足ながら、この名が体を表す命名に筆者は好感を持っている)。
 nViewなどの基本的な機能はNV25のものを継承する。
 なお、買収した3dfx社(3dfx社が買収したGigaPixel社のものも含む)の技術が本格的に取り入れられたのはこの世代からだとされる(Rampageの系譜でもあるといえるかもしれない)。
 リファレンスデザインのカード(しか存在しないようだが)において、FX5800ultraにはFXflowという特徴的な隣のスロットを潰す、ブロア型ファンによる外気取り入れ/放出を行う、GPU温度による可変速制御冷却システムが採用されたが、これは高負荷時の凄まじい騒音で知られ、(それだけではなく?)非常に不評であったようだ。
 FXflowだけの問題ではないだろうが、NV30は商業的に失敗で終わるようで、nVidiaとしては汚点と考えているのか、同社のwebサイトの製品ラインナップからFX5800が消去されている(なかったことにされてしまったのか?)。
 速度的にはShader使用時、特にPixelShaderが16bitFPやINT処理を行う場合は優れた速度を示すようだが、32bitFPでは低速(nVidiaとしてはこれはゲーム用リアルタイム処理を想定したモードではないらしいが)で、DirectX9環境ではATi R300コアがリファレンス的な扱いをされることもあり、"異端的"なnVidiaのアプローチを速度として一元的に評価することは難しそうだ(これまでもそうした問題がなかったわけではないが、"DirectX9"という1つのAPI下で評価が困難というのは例がない)。
 どのソフトウェア(群)の実行結果をもってして指標とするかについて大勢が決することがあるまではDirectX9以降については、ベンダ間での微妙な速度比較は差し控えたい。

・玄人志向 GFX5800-A128C
 PalitのOEM生産品とされるGeForceFX5800カードで、他のベンダの物もそうであるようにリファレンスデザインの製品である。
 AGP用で、VRAMはDDR-II品を128MB搭載している。
 FXflowではないがブロア型の隣のスロットを占有するファンが取り付けられており、強力な電源系(外部から給電を受ける設計になっている)も併せて、非常に「ごつい」カードとなっている(載っているコンデンサの大半がSANYO OS-CONだったりする)。
 画質は最近のnVidiaリファレンス基板らしく充分な品質が得られているが、ATiやMatroxと比較すると劣って感じる(筆者としては我慢できないわけではないが、選んで使いたいとは思えない)。
 注目の騒音問題だが、昨今のカードの中ではむしろ静かといえる水準であり、正直拍子抜けした。電源投入後の数秒間のみフル回転をするようで、この騒音は確かに50倍速CD-ROMのフル回転かと思える音がするが、2D環境下ではファン付きビデオカードとして静かな部類の音(ただし発する音は高音であり、耳障りかも知れない)であり、3Dアプリケーションを使用した場合でも、たとえばRADEON9700PROなどと同様の音で、筆者としてはこのカードの騒音が大きいとは言えない。
 この音の様相は玄人志向のものだけかもしれないが、FX5800用ブロアファンはおそらく共通で使われている物と思われる。また、3DMARK03などをループさせても電源投入時のフル回転の音どころか、長時間動かしても音が大きくなるように思われなかったことを付記しておく。
 ただ、ここまでFX5800ultraの騒音が批判の対象となっているということは、おそらくFX flowがものすごくうるさいのか、あるいはFX5800ultraはFX5800より大幅に熱く、ファンの回転数が最大に近づくのではないかと筆者は推測するが、手元の1サンプルをもって検証とするわけには行かないので、あくまで憶測としておく。
 FX5800無印についてはうるさくないかも知れない、と思っていただけばよいだろう。

GeForceFX5200 Series
 NV30ことGeForceFX5800を元に派生した廉価版のコアで、NV34と呼ばれる。演算器のデータ精度などの仕様も同一(CineFX Engine)。
 製造プロセスは150nm。ただし、ほぼ共通仕様のノート用のGoシリーズに関しては130nmプロセスで製造される。約4500万トランジスタを集積しているとされる。
 AGP8X対応であることや、駆動周波数によってultraと無印とに区分されるあたりもFX5800同様である(現物はお目にかかったことがないが、5200SEという廉価版も用意されているようだ)。
 演算ユニットの構成についてはnVIDIAが資料を出していないので詳しいことはわからないため、FX5800の約1/3のトランジスタ数であることから、構成を推測するよりない。また、アンチエイリアス関係の機能が削られているが、これは単にパフォーマンスの問題から有効にしても意味がないため実装されていないと見るのが妥当だろう。
 VRAMはメモリバス128bitでDDR-SDRAMが接続できる。
 動作クロックが低いことから、ultraであってもそれほど強力なファンは必要とせず、無印に関してはパッシブヒートシンクのみという構成の製品も多い。
 基本的な機能はFX5800と共通なので、nView関係などについてはFX5800などの項を参照して欲しい。
 速度的には単純に低速と言って差し支えないと思われる。このチップはゲームにおける実用性を優先したものではなく、全ラインナップにCineFX Engineを積むために、無理をして少ないトランジスタ数でDirectX9(というよりCineFX)の仕様を実現した、機能優先のチップで、実用的な速度を実現するためにはおそらく演算器の数が少なすぎる。したがって、ゲーム系アプリケーションでは旧製品のMX4x0シリーズなどよりむしろ遅いことも珍しくはない。これを欠陥ととらえるか、単なる設計思想の違いととらえるかによってこのチップの価値は大きく違ってくると思われる。たとえばLonghornのUI仕様を考慮してDirectX9が動作する低価格製品を望むといったニーズに対しては、冷却ファンを必要としない製品が多いこともあって、良いチョイスとなることも多いのではなかろうか。

・ELSA GLADIAC FX534 128MB
 リファレンスデザインを踏襲したFX5200カードで、AGP用。
 出力端子はD-sub15ピン、DVI-I、S-Videoで、DVI-A-D-sub15の変換コネクタが付属している。
 128MBのDDR-SDRAMが128bit接続されており、冷却機構はパッシブヒートシンクのみとなっている。
 低価格帯のカードながら品質が良く、実装部品にしてもSANYOやニッケミのコンデンサが使用されていたりする。
 画質は良好で、玄人志向のGFX5800-A128C(FX5800)より明らかに優れていると感じた。筆者には、1600*1200を上回る解像度では画質の低下が感じられるが、1600*1200においてはMatroxのParheliaより良好だと感じられる。
 騒音源であり、かつ故障しやすい機械部品であるファンが存在しないこと、設計世代が新しく廉価で製品品質が良好であることなどから、3Dゲームユースを想定せずに長期間使うカードとしては良いチョイスになるのではないだろうか。
 なお、ヒートシンクの温度はかなり高くなるため、一つ下のスロットは開けて運用するのが望ましい。

GeForceFX5600 Series
 NV30ことGeForceFX5800を元に派生した廉価版のコアで、NV31と呼ばれる。演算器のデータ精度などの仕様も同一(CineFX Engine)。
 製造プロセスもNV30同様に130nm。約8000万トランジスタを集積しているとされる。
 AGP8X対応であることや、駆動周波数によってultraと無印とに区分されるあたりもFX5800同様である(現物はお目にかかったことがないが、5600SEという廉価版も用意されているようだ。また、ultraの上位にFCなるものがあるともされる)。
 演算ユニットの構成についてはnVIDIAが資料を出していないので詳しいことはわからないため、FX5800の約2/3のトランジスタ数であることから、構成を推測するよりない。
 nVidiaのコメントによると「4ピクセルパイプだが、6個のPixel Shaderを備える」とされており、NV30は16bitFP*8基、INT*4基であったことから考えると、16bitFP*6基、INT*3基であると思われる。全般にNV30*2/3と言っていい内容だろう。
 VRAMはメモリバス128bitでDDR-SDRAMが接続できる。
 基本的な機能はFX5800と共通なので、nView関係などについてはFX5800などの項を参照して欲しい。
 速度はFX5800とFX5200のちょうど中間といったところである。
 RADEON9500/9600シリーズと価格的に競合しているが、万能機としての性格の強いATiに対してFX9600はCineFX Engineをゲーム環境で使うためのエントリーモデルといった雰囲気であり、いささか分が悪い面が感じられる。

・玄人志向 GFX5600-A256C
 リファレンスデザインのFX5600カードで、AGP用。
 出力端子はD-sub15ピン、DVI-I、S-Video。256MBのDDR-SDRAMが128bit接続されている。
 製造はPalitで、基盤は紫色。筆者としては値段の割に実装部品の品質が悪くなかったので購入した。コンデンサはルビコンでメモリはelixir。初期ロットはNanyaであったようだ(もっともelixirはNanyaのB級品サブブランドであるが、メモリモジュールのように何と接続されるかわからないものではなく、組み込み状態で出荷されているものであればあまり差がないと考えてよいように思う)。
 画質は良好で、ELSA GLADIAC FX534(FX5200)と同等の画質が得られている。

GeForceFX5900 Series
 商業的には失敗となったNV30を短命たらしめるべく登場した後継チップで、NV35と呼ばれる(nVIDIAのWebページなどを見る限り、NV30系のFX5800はなかったことにされてしまっており、さも当初から5900/5600/5200のシリーズ構成であったかのように表現されていたりする)。
 製造プロセスはNV30同様の130nm。
 NV30に対してメモリバスの強化(128bitから256bit)が行われており、DDR-II-128bitが誤りでDDR-256bitが正しいと自ら認めた形になっている。最大搭載量は256MBで、DDRだけでなくDDR-IIにも対応しているが、ビデオカード製品としてはDDRメモリが使用されているようだ。
 CineFXエンジンのバージョンは2.0となっており、根拠は不明だが1.0に対して2倍の性能へ向上したとされている。PixelShaderの演算器の精度が倍になったとされているが、筆者には詳しい意味がよくわからない。
 他には、UltraShadow(影のボリュームを増やして質感を向上させる機能)、Intellisample HCT(高解像度テクスチャ圧縮)といった機能が実装されている。
 シリーズ構成としては上位からFX5950、FX5900ultra、FX5900、FX5900XTとなっている(内、5950とXTは当初のラインナップには存在しなかった)。ATiにおいては"XT"は最上位製品に対するsuffixとして使われているが、nVIDIAでは最下位製品を示すものとして用いられるので注意を要する。
 なお、FX5950はNV38という名前を与えられているチップだが、動作周波数以外にNV35との違いが見あたらないので同一のものとして取り扱うことにする(クリティカルパスをつぶすなどのステッピングアップがされているのではないだろうか)。
 FX5800ultraで不評であったFX Flowは採用されていない。5950や5900ultraでは相変わらず2スロットを使用する冷却機構が採用されることとなっているが、カードベンダの方針によって1スロット分のサイズのものが採用されていることもある(いずれにしてもこの価格帯のビデオカードではAGPの下段のスロットは使用できないと考えた方が無難である)。
 性能的にはNV30系に対して順当に高速化されており、特にメモリ帯域に厳しい高解像度の処理で大きな性能向上を達成しているようだ。

・玄人志向 GFX5900-A128CL
 リファレンスデザインのFX5900カードで、AGP用。
 出力端子はD-sub15ピン、DVI-I、S-Video。128MBのDDR-SDRAMが256bit接続されている。
 製造はSparkleで、基盤は赤色。実装されているコンデンサはSANYO製で、電源周りにはOS-CONも使用されている。
 画質は良好だが、ELSA GLADIAC FX534(FX5200)との比較ではやや劣って感じる。
 騒音レベルは低いと感じた。温度によってファンが可変速制御されているが、3D処理時に急激にうるさくなるといったことはない(ファンの音が高くなった、といった感じだ)。極端な静音には適さないかもしれないが、性能と音量のバランスはかなり良いように思う。

GeForceFX5700 Series
 GeForceFX5950(NV38;本サイトではFX5900シリーズとして取り扱う)と同時に登場したNV36コアで、一見たいした特徴がなさそうでいて、実はいろいろと変わった製品である。
 製造プロセスは130nmだが、これまでnVIDIAが利用してきたTSMCのFabでなく、IBMのFabで製造されている。FX5700という名前からFX5600の発展版かと考えがちだが、私はFX5800(NV30)を発展、低価格化させた新コアであるととらえている。
 メモリバスは128bitで、これをとらえると256bitのFX5900(NV35)を半分にしたもののように見えるが、私にはDDR-IIをつなぐことを前提としたFX5800系の設計、「NVIDIAが本来想定していたNV30の後継コア」を元に作られたように感じてならない。カードベンダーからの声として「予想よりも消費電力が高く苦労した」という記事があるが、これに関して私はFX5800が元設計だからではないかと思った。
 AGP8X対応、おそらくはPCIバスでも使用可能。
 機能レベルではNV35と同等であり、CineFX2.0、UltraShadow、Intellisample HCTといった面でも共通である。
 私はあまりFX5600(NV34)との比較では考えたくないのだが、NV34比ではVertexShaderの性能が3倍になったとされる。反面PixelShaderの強化はあまり行われていないとされている。
 カード製品の構成はFX5700UltraとFX5700があり、動作周波数だけでなく、Ultra版はDDR-IIメモリ採用ということになっている。
 性能的にはFX5600の上位というよりはFX5800/5900系の下位といった位置づけにある(両者の間に暗くて深い溝があると思ってほしい)。
 なお、このチップは(少なくとも筆者が手にした製品とドライバのバージョンでは)ビデオオーバーレイの品位が荒いように思える(NV36だけなのか他もなのかは未調査)。

・玄人志向 GFX5700U-A128X
 リファレンスデザインのFX5700Ultraカードで、AGP用。
 出力端子はD-sub15ピン、DVI-I、S-Video。128MBのDDR-II-SGRAMが128bit接続されている。
 SAA7114Eビデオデコーダが搭載されており、NV36チップそのものにはTV出力機能がないのかもしれない。
 製造はSparkleで、基盤は青色。実装されているコンデンサはチップコンデンサ以外すべてOS-CONである。
 画質は良い。ELSA GLADIAC FX534(FX5200)より良く、2048*1536の解像度が一応実用といえる程度の品位が得られている。気のせいかどことなく上品な画で、チップの製造がIBMであることから、筆者のBlueDAC病でよく見えているだけかもしれないが、筆者はこの画質が気に入っている。
 騒音はFX5900よりやかましい。ファンが可変速制御でないため、常に最大出力で回っているためであろう。
 筆者は単にファンを止めてスロット直上から風を当てて使っている。ドライバの温度モニタから確認する限り、平常時35〜55度、高負荷時65〜75度程度。デフォルトのクールダウン閾値が129度とまだまだ余裕があるので、この冷却でも夏場でも問題ないだろうと考えている。

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