統合チップセットの悩み

8/1 2001

 少々実用的部分からは外れる。
 統合チップセット化の流れやらトレードオフやら。実在の製品への評価には踏み込まない。

 さて、PCの構成部品は出来る限り少なく、安くの流れからかつてはRAMDACがグラフィックスチップに内蔵され、その際には画質というファクターが犠牲になった。理由は出力コネクタから電気的に遠ざかったこと、本質的にアナログであるRAMDACがデジタルのグラフィックチップと同一コアに組まれることによる製造上、相互干渉、ピン数などの問題からの性能低下、本質的に回路の品質が下がったなど。口から出任せでテキトーに書いた文章につきバリバリウソが入ってるかも知れないがとりあえずここは本題じゃないので次。

 で、その流れで次にはいわゆるNorthBridgeなる、メモリやらCPUやらのコントローラとグラフィックスが統合される流れにあり、おさらいすると、

1,PCの高帯域IOはCPU、メモリ、グラフィックス、高速IOバスやスイッチ(PCI-X/PCI/AGPなど)であり、これらは一つのコントローラが統括する流れにある。グラフィックスは高帯域スイッチ/バスを必要としているためそのコントローラに直結されるべきである(これはAGPの思想である)。
2,NorthBridge自体のゲート数はあまり増加していないが高速化への欲求はあり、製造プロセスの更新が求められる分野である。制御対象のスイッチ/バスは現状ほぼ全てパラレルでありピン数が多く、その接点数を確保するためにはダイサイズを小さくすることが出来ない。したがって余剰は多く、製造プロセスの更新が求められるという意味でグラフィックスチップと共通点が多い。

 というわけで統合されてしまうわけで、特に外部AGPをサポートしなくて良いなどと言ってしまえばピン数も削減できてバンザイだったりする。が、RAMDACを統合したときのようにイロイロとトレードオフになる点があるのであった。
 推敲を放棄してダラダラ書くなれば、

 最新グラフィックス用に求められるメモリはPCメインメモリに対してバス幅は2倍(i850などは実質128bitなので同じ)、駆動周波数も2倍程度あり、実効帯域は4倍に達する。この性能要求はPCメインメモリに対して行うには過当であるためハイエンド統合グラフィックスチップなるナゾの物を作るのはかなり困難である。統合チップセットへの要求は基本的にコスト面での要求が強いことも問題。

 統合チップセット用のメモリは基本的にはメインメモリから分捕ってくるSMAという方法が使われるが、通常のPC用の帯域とメモリ帯域を共有するため実効帯域はさらに少なくなる。また、混雑が発生するタイミングは共通なので時系列をずらすことで回避することも出来ない。

 グラフィックス用メモリはその性質上、何もしなくてもRAMDACへデータ出力をしなくてはならないが、PCメインメモリはシングルポートであるためさらに帯域が割かれる(これはバースト転送であるのでメモリの理論限界値で出力できるはず)。たとえばフレームバッファ4MBを要する解像度を80Hzのリフレッシュレートで使用すると単純計算で320MB/sの帯域が必要になる。ちなみにPC100SDRAMの上限帯域は800MB/sである。
 統合チップセットでは高い解像度が得られないのはRAMDACの周波数ではなくリフレッシュの帯域による(でなければ色数によって上限値が異なる説明にならない)。
 この解決にはDRDRAMやDDR-SDRAMなどの高帯域メモリを使用することで解決可能(データに離散性がないのでレイテンシは関係ない)だが、DDR-SDRAMはともかくDRDRAMが統合チップセットに使われうる望みは薄い(バースト時の実効帯域はDRDRAMが非常に優秀であり、ピン数の削減効果も考えると実は統合チップセット用途としてはDRDRAMは優秀である。i830Mのグラフィックス用にDRDRAMを外付け出来るとした設計の根拠が若干見えるような気がする(支持はしないが)。ただし消費電力が高くモバイルには向かないだろうが)。
 また、解像度を上げれば上げるほどPC全体の速度が低下する現象も起こりうる(i810が登場したときメモリだけPC100というのに少し首を傾げたが、ここを考えると納得がゆく)。

 チップの設置位置はCPUとメモリとに出来る限り近い位置であることが求められ、アナログ的に良い位置に設置できることはまずあり得ない。従ってアナログ出力の品位にはあまり期待できない傾向がある。

 とマア、こんなものだろうか。
 これらの問題について解決を試みるならば、

・CRTでなく液晶とDVI接続する。TMDSトランスミッタへの出力ではリフレッシュレートを高く取る必要がなく、リフレッシュ用帯域を低く押さえることが出来る。また、DVI出力の場合はアナログほどノイズ問題で苦しめられることはない。
・高帯域のメモリをメインメモリに使用する。DRDRAMが全体に普及するというシナリオは想定しにくく、またモバイルに使用することも考えると消費電力面でもDDR-SDRAMが候補になるだろう。

 なんとなくnVidiaのnForceがDDR-SDRAMを128bit接続した根拠あたりが邪推できてしまうが、実際DDR-SDRAMの浸透が進むのは案外統合チップセットで使用したときの実効からかもしれないと思ってしまった。
 まとまりは悪いけれどモチベーションが下がったのでこの程度で。


P.S.:統合チップセットの使いこなし

 統合チップセットの機械を使わざるを得なくなった場合、特にその画質や振る舞いに耐え難い印象を持ったならばとりあえずMatroxのPCIのビデオカードを一枚手元にストックしておくことをオススメする。
 ただし、統合モノは悪名高きLowProfilePCIの機械が多く、どうにもならないという局面も多いわけだが……。LowProfilePCIでショボいモニタと合いのいいカードも探しておくべきかしらん。

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