画質神秘学 序論:格式

5/10 2001 公開
5/11 2001 微修正
5/12 2001 加筆
5/14 2001 更新
6/29 2001 更新
10/15 2001 更新
12/14 2002 追記

 ここから先の記述はオカルトである。なぜなら、科学による説明は放棄したからだ。
 科学による追求ではどうしても筆者の理解に余る、相性じみた問題について、極めて経験則的に、観念的に、叙情的に、直感的に、記述した、おそらくは叡智の結晶の破片である。
 これは魔術書である故に読み解く者の認識に大きく左右されうることを理解されたし。
 また、この文書はデンパな雑誌記事やナゾのシューキョーの冊子と同レベルの物として扱うべきであり、教科書的に使うような変なことはしないように。

 まず、格式という概念について書かなくてはならない。
 言い換えるならばこれは物が発しているオーラの品位である。工業製品としての善し悪しとは必ずしも一致しない。
 ほとんどの場合は販売された金額に比例するが、例外もある。
 筆者などはこれを直感的に、ゾクゾクするかしないかなどの別の感覚器でとらえるが、何せオカルトであるので理屈での説明は行わない。
 オーラが視えるようになれば、立派に位階をもって遇されるであろう。

 さて、画質向上に必要なことは、モニタとビデオカードの格式を合わせることである。釣り合わない組み合わせは当事者が不幸であるばかりか、極めて冒涜的である。
 経験則的に釣り合っていないときは画質障害が発生する。特にビデオカード側の格式が高くモニタの格式が低い場合には無惨である。
 極めて低フォーカスで色だけは鋭く見るに耐えない画であるため、神秘を解さぬ者はそれを不出来なビデオカードとして片づけてしまう。
 モニタ側が悲鳴を上げて異常に暗い画として観測されることもある(電源を入れ直すと本来の色表示が得られることが多い)。
 逆の場合はそれほど無惨な結果にはならないが、色が荒れたり白や黒が痩せたりする事が多い。多くの場合モニタの調整で実用程度の品位は得られるが、この場合はモニタ側の格式にあった画ではなく、強引にモニタの格式を下げた結果として考えるべきであろう。

 次は、格式の認識方法である。
 オーラが視えればこんな事を書く必要はないのだが、せめて実例くらいは示さねばなるまい。
 筆者が目を凝らして長く見つめたことのある物以外は観測と効能の一致が難しい面があるため、あえて省かせてもらう。

 まずはモニタ側の格式である。
 筆者が知る限りでは、「格式:上」を名乗れるモニタはほとんどないが、わかりやすい言葉で言えばほとんどの場合ハイエンドモニタのことである。
 「格式:中」は単品売りされるレベルの普及帯モニタが属する格式である。足切りラインとしてiiyama製モニタがあり、これより格式が低いと考えられる物には「格式:中」を付けることに抵抗がある。
 「格式:下」はオマケモニタや素性の知れぬ韓国製/台湾製などのモニタである。原産国で差別するわけではないが、日本メーカ以外で「格式:中」以上にかかるモニタは数少ないため、判断基準として適正であると考える。
 上にも書いたが、これらは工業製品としての善し悪しとは必ずしも一致しない。古いハイエンドモニタ(95年より前の物など)は工業製品としては良いという評価は与えがたい(水平同期周波数の許容レンジが狭いなど)が、やはり格式は上である。逆に昨今のオマケモニタの中には良好の物が含まれることが増えてきたが、本体メーカが取り立ててモニタの優位を語っていたりする物ではない限り、基本的には下である。

 下にその実例を箇条で列挙する。

「格式:上」
 EIZO/NANAOの1インチ当たり定価1万円を越える物、できればErgoPanal搭載機が望ましい。(E65T,E66T,E57Tなど)
 SONYのGDMシリーズ。(GDM-F500,F400,19PSなど,上の上といった物は少なく、上の中に偏る)

「格式:中」
 三菱ブランドのダイヤモンドトロン採用物(RD-17G系)
 iiyamaのダイヤモンドトロン採用物(MT-8617E以降)
 EIZO/NANAOの普及機(53T,54T,55D,T760/761/961/962など)
 SONYのCPDシリーズ。ただしSF7以前は「格式:下」とする。
 現役時代にこれらと価格/品質的に競合可能だった物
 97年頃以降の物(ただし最近の物はこの基準だけでは判断しがたい)なら基準の一つに電源を切ったとき管球がちゃんと黒くあることというものがある(CRTは特性上それより暗い色は出せない)
 さらに加えるならば、暗めの部屋で使用したときにモニタが光って感じないレベルで充分実用になる発色(いわゆる良い発色は「格式:上」の領分なので問わない)が得られることというのもある

「格式:下」
 パソコンのオマケモニタ(ことさらダイヤモンドトロンなどと主張する物はかろうじて中にかかることが多い)
 Acer,LG,SAMSUNG,MAG,および名前すら認知されないレベルのメーカの販売店に置ける位置づけが廉売品である物(これらのメーカが力を入れて投入している平面管は実物をまともに評価したことがないので明言は避ける)
 iiyamaを下回る位置づけにある単品モニタ、あるいはiiyama自身の非ダイヤモンドトロンモニタ

 むろん筆者はビデオカードほどモニタを見てきたわけではなし、この評価からはずれる、「当たり」と「クズ」とが存在することも知っている。

 基本的には「格式:上」を購入するのは常人には難しい領域にあり、いわゆる詳しい人はほとんどの場合「格式:中」をもって良いモニタと評価し、自身それで満足し、他人に勧める傾向がある。
 これは正しい。
 神秘の世界を知らずに常人として完結できる幸福な道である。
 しかしながら、この文書を読解し、その意図するところを知れる人はすでに常人の道を踏み外していると理解されたい。
 知っていて、「格式:中」に甘んじるのは苦痛である。
 または一種の悟りを開いた賢明な方の領分である。
 しかしながら我慢できず、今となっては新品では21inch以上にしか「格式:上」モニタが存在しないため、金銭的苦行者にはリース落ちという道を示しておきたい。
 リース落ちは極めて安価に「格式:上」の入手を可能とし、一般中古よりおおむねその品質管理がよい。
 具体的な購入手段は示さないが、捜索能力を動員すれば発見可能であろう。
 なお、そうした物は管球が痛まない限り、3万円程度のオーバーホールで現役時の光を取り戻すことも知っておくと良いだろう。

 では本題のビデオカードに移る。
 まず、工業製品として明白に劣る物は格式外とする。そもそも使用すること自体罪悪であると理解されたい。
 基準として、ProlinkのGeForce2MXカードを挙げる。nVidiaリファレンスのコピーボードであり、廉価であり、格式は中である。これより工業製品として明確に画質が劣る物には格式を与える必要を感じない。
 それでよしとするのであれば神秘学から破門することにする。常人として幸せに生きてもらいたい。
 これで市販品の50%ほどが格式外として除かれたと思う。
 工業製品としての善し悪しはChipsInformationの製品別記述を参考にしていただきたい。

 さて、格式の付け方だが、モニタの格式が高い物でその力を発揮する物が高いとして定義する。これもまた不思議なことにオーラの質で見分けることが可能だが、そうした記述では混乱を招くのみであるため、一応モニタのように例示することにしたい。
 また、区分けすると中が最も多いが、細分化を必要とすると思われるため、「格式:上の上」などのサブクラス表示を行った。「格式:下」に該当するカードは思い当たらないので、「格式:下」は記載しない。

「格式:上の上」
#9のImagine/Revolution系チップの物のIBM製RAMDAC搭載機(Revolution3Dなど)

「格式:上の中」
CanopusのSPECTRAシリーズのDFSをSuperFine側にしたもの

「格式:上の下」
#9のImagine/Revolution系チップの物のTI製RAMDAC搭載機(Imagine128-1280)
#9のS3チップの物の外付RAMDAC搭載機
CanopusのPowerWindowシリーズの外付RAMDAC搭載品

「格式:中の上」
CanopusのSPECTRAシリーズのDFSをFine側にしたもの、またはDFSのないもの
ELSA製nVidiaチップボード(というよりそれ以外を筆者は知らない)
ATi製ボード(RAGE PRO以降のみ検証した)
PERMEDIA系チップ全般(多くはこの格式という意味で、ばらつきはある)
外付RAMDACカード全般(多くはこの格式という意味で、ばらつきはある)

「格式:中の中」
#9 RevolutionIV
nVidiaチップ全般(多くはこの格式という意味で、ばらつきはある)
S3チップ全般(多くはこの格式という意味で、ばらつきはある)
SiSチップ全般(多くはこの格式という意味で、ばらつきはある)

「格式:中の下」(繰り返すが、工業製品として劣るという意味ではない)
Matrox製品全般
Hercules 3DProphet4500

 以上である。
 これを元にモニタ側と格式の釣り合いをとることでおおむね良好な性能を引き出すことが出来るが、そのことを筆者が保証するものではない。
 また、カードによって許容範囲の幅が異なり、Canopusの外付RAMDAC製品や#9のS3チップ外付RAMDAC製品は許容範囲が広いが、#9のImagine/Revolution系は許容範囲が狭い。
 筆者が哀れむのは、以下の典型的なパターンである。

・Matroxがいかなる場合でも最強と信じて格式高いモニタと組み合わせて、その性能が活かされていないことに気づかない。
・格式高いビデオカード(おおむね高価である)は条件を問わず優れていると考え、購入するも理想的な画質が得られず、「発色だけはよい」などと誤解する。

 ある製品群がジャンルとして識別される段階では、まず「格式:上」のみで市場が作られる。次に数を売るべく「格式:中」が派生する。
 この時期が最もジャンルが栄える時期であり、「格式:上」はその存在意義を示すべく高性能化が進行する。
 次に、技術的に後進の企業が最下層に参入することで「格式:下」が構成される。「格式:下」の技術水準が「格式:中」に近づくにつれ、過当な価格競争から「格式:下」「格式:中」の価格差は小さい物となり、「格式:上」との価格差が拡大することになる。
 市場として成熟するにつれ、購買層の趣味性が低下し、オーラが視える者の割合が激減する。大衆とエセマニアは「格式:上」の価値を解せず、その価格的プレミアの維持が困難となるにつれ「格式:上」は足抜け的に去ってゆく。
 残されるのは数値的価格性能比でしかその価値を計れぬ製品群であり、人々であり、市場である。彼らの語るところの高性能な上級機は「格式:中」程度であることが大半であり、オーラが視える者たちをげんなりさせる。
 結果、市場は趣味性を喪失し、趣味性そのものは結晶化を迎える。
 競争の軋轢から差別化を求める向きが時として「格式:上」を生み出すが、成功することは少ない。

 2001年現在、CRTという物は「格式:上」絶滅寸前期にあり、ビデオカードもまた特定分野のみに「格式:上」か生息できる、末期症状を迎えている。
 今やCRTはSONYとEIZOの真の上級機、ビデオカードはCanopusとGL用カードにしか「格式:上」は生息しない。
 これらが絶滅したときが筆者がこの分野に見切りを付ける時期である。

(12/14 2002 追記)

 公開してから一年半ばかり経ってしまった。
 納得いただけた様子あり、また頭のオカシイデンパ人間として扱われている様子もあり、逆に教本じみた扱いがされている場合もあるようで、内容の放置が許されない状態になったのかも知れないと感じるようになった。
 というわけで、ここ最近になって見えてきたことや変化について書いていこうかと思う。

1,CRT全体の液晶化

 最近のCRTは満足に色が出なくなった。
 少し表現するのがムズカシイのだが、明るくしないと色味がはっきりしないと言うべきだろうか。
 自然界のほとんどの視覚情報は照明の下での反射光で、逆にCRTやLCDは自発光である。印刷物は自ら光っているわけではないが、その色表現力はCRTより高い水準にある。しかし、CRTやLCDは色表現力を高めるためには、光量を(人間が必要とする以上に)増やす必要がある。
 印刷物の方が見やすいね、と言う内容をもっともらしく書くと上のようになるのだが、要するにCRTやLCDが「明るい」ことは別にメリットでもなんでもないのである。距離を取って見る場合は明るい必要があるけれど、PC用の場合はそれほど距離を取って使用するわけではない。
 で、最近のCRTは明るい物が多くなった。確かに店頭などの照明条件では明るくないと美しく見えない。しかし、実際に使用する条件ではそう明るくする必要はないのである。こういったCRTは明るくしないとろくに色が出ない傾向がある。つまり、実際の使用条件では冴えない色条件に押し込めるか、必要以上に明るくするかの二択を強いられるように感じる。
 これではCRTのメリットは潰されてしまう。
 LCDと大差ない表現力しかないならば、DVI接続の完璧なシャープネスを求めてLCDを使った方がマシということになりかねない。

2,ビデオカードの出力信号

 最近のビデオカードの出力信号は、製品による差が減ってきている。
 ひどい話、普通の価格帯の物はどれを買っても大差ないように感じる。まあ、ダメダメな製品(上で言うところの工業製品としての品質が悪い物)は未だ存在するのではあるが。
 で、格差がなくなった末に収斂した先が何かというと、1で書いたLCDのような色しかでないCRTへの最適化であると感じられる。
 筆者はSONYのGDM-F520というCRTを使用しており、これはprofessional、standard、dynamicという3つの動作モードを持っている。後ろに行くほど明るく、最近のCRT的な特性に近づいてゆく。このCRTに3Dlabs WldcatVP870を接続し、professionalモードで調整するとかなり「印刷物に近い」発光条件が得られる。これが筆者にとって最も望ましい状態である。しかし、ATi RADEON9700PROを使用したときはprofessionalモードよりstandardモードの方が見やすいという現象が起こる。
 サンプル数がそれほど多くないので、全体にこうだ、と言い切るのは危険すぎるのだが、傾向としてはこのような感じかも知れない。

3,結局は経験則をもっともらしく書いているに過ぎない

 上の格式話についても、結局の所は経験則からの帰納を試みているに過ぎない。かなりの数の例外がある、わりといい加減な物だというのが書いた本人の感想である。
 現在、SONY GDM-F500RにMatrox MillennimIIをつないで使っているが、これは#9 Imagine128S2のマルチモニタ時のパフォーマンスが悪いから、と言うのが理由だが、1600*1200で24/32bit色が出ないのでCanopus SPECTRA Light T32 PCIにリプレースすることを検討したものの、実際の画を比べてみてMillennimIIの方が見やすかったというのもある。
 出てくる画はF520+Wildcatの印刷物のような感じではなく、蛍光気味のシャープネスの強い画だが。EIZO T760/761にRevolutionIVを接続したときに得られる画に近い。
 まとまりのない文章だが、結局イロイロ付けてみて合う物を使うしかないというのが結論だろうか。

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