ビデオカードの画質について

6/17 2000 公開
11/3 2000 大幅改訂
12/3 2000 更新
4/2 2001 誤記修正
4/7 2001 更新
4/20 2001 最終更新

画質神秘学(現在執筆中)と内容が食い違った場合は画質神秘学が優先されます。

 さて、画質だ。
 日常的にPCを使う身としては、ビデオカードの画質はかなり重要な要素だと考えている。しかしながら、残念なことに筆者の意見に必ずしも同意が得られるわけではなく、たとえば市販されているビデオカードの半数程度の品目は筆者から見て落第点である。
「何か僕のビデオカード落第らしいけど、充分綺麗じゃないのか?」
 こういう感想を持たれるかも知れないが、それはそれで結構な話である。皆にコンポが必要なのでなくラジカセの方がいい人もいるのと同じ事、人それぞれのスタンスは大切だと信じる。
 筆者がこれからやることは、良い物の世界を垣間見せ、その上でどれがよいか人それぞれ勝手にどうぞ、とまあ、こういうスタンスでの紹介である。

 さて、善し悪しとはつまるところ何なのだろうか。 オシロで矩形波に近ければ良しってのは真実だが、あくまで人間様がPC使っている上で画質の影響を享受するのは、視覚からである。オーディオで言われた話だが、音は信号だが聴くのは人間である。サイン波の再現性が最も高い機械が音楽にいいかと言えば必ずしもそうではなく、画質の世界もおそらくその傾向もあるんじゃないかなと思っている。
 本当かどうかはさておき、筆者が見たものとその集積からの学習結果を数値的じゃなく感性的に書いてみようかと思う。従って、必ずしも正しいとは限らないし、別の意見とは食い違うこともあるだろう。
 参考までに、筆者が画質を見るときにリファレンスで使っているモニタはSONY GDM-F500で、SONY GDM-F400、EIZO T761、EIZO T760で見ることもある。どれもFDトリニトロン管のモニタであり、他方式のモニタでの視認は行っていないので、そうした方々とは意見が大きく異なることも考えられる。

 まず、画質が大切なのは高解像度で使う向きだけなんじゃないの? と言うことに関して。
 これは一面では本当で一面では正しくないと思っている。
 実用性と言う点では低解像度で画質の良くないカードと画質の良いカードの差はあまりないが、画質の良いカードは低解像度にしてすでに、良くない物に対して差を付けている。
 すっきりとした抜けの良い画、ぎらぎらしない落ち着いた画。
 目で見ると、差があることは確かに感じられると思う。ただし、画質の差での実用度に大きな隔たりがないため、多くの場合はどちらでも良いと感じがちである。
 多くの場合、実用性という点で画質が無視できなくなってくるのは1280*1024あたりの解像度からである。見られる環境にある方は見てみると良いだろう。
 リフレッシュレートは70Hz〜85Hz程度で、下げれば下げるほど画質が向上し、ちらつきが増えるため、自分がちらつきが気にならない程度まで下げてゆくのが良いと思われる。筆者としては72〜75Hz程度が気に入っている。デフォルトで100Hzや120Hzに設定するビデオカード(のドライバ)や、規定の解像度というもの(60Hz)に設定するビデオカードも多いので、手動でいちいち設定してやる必要がある(ゲームする人であれば、640*480,800*600,1024*768あたりの256色モードをゲームが使用するため、このモードのリフレッシュレートも手動設定するといい)。
 試された方は、実用になっているだろうか。良好であれば同じ要領で1600*1200や1800*1440、2048*1536なども試してみると良いだろう。
 良好な場合は字が滲まずに抜けの良い表示が保てている。 そうでないときは中央だけ綺麗だが、四隅に行くと滲む、全体にぼけてしまって使えない、ゴーストによって文字や図形が二重以上に表示される、よく見てみると縦線が赤青緑に分離して見える(ミスコンバーゼンス問題は画面全体のときや画面の一帯に集中して起こる場合があるが、モニタの調整機能によってどれだけ修繕できるかが勝負となる)、などの「画質障害」が起こっているか、そもそも字が小さすぎて見えないなどのサイズによる制約を受けているかのどちらかである。
 そもそも表示されない場合もあるが、これはビデオカードかモニタの仕様の限界である。
 サイズ問題は仕方がないので諦めるしかない。
 画質障害に関しては、ビデオカード、モニタの品質、伝送経路のどれか、または複数に問題があって発生する。
 ビデオカードの画質は各個体のレビューに書いたが、出力信号の品位である。
 信号線を高周波数ノイズ源や電源などからシールドしたり距離を置くなどの、基板引き回し、高品位な電解コンデンサ、昔の物であれば外付けの高品位なDACなどの要素があるビデオカードは「画質が良い可能性」が高い。
 モニタの品質に関しては、管の製造メーカ、管の格、組み立てメーカの技術力とかけたコスト、によって決定される。どれが良い悪いはこのwebがビデオカードのレビュー目的ということなので避けるが、基本的に日本製の管を、製造元か日本の専業モニタメーカが製品として仕立てたものが高品位である、と思って良いだろう。
 あまり目が向かないのが伝送経路だが、平たく言えばケーブルのことである。
 きちんと他の信号と干渉しないようにシールドし、インピーダンス75オームの充分な品質の線で、接点数を減らして配線すれば良いわけなのだが、その理想条件を満たすのは難しいことでもある。
 低品質な物では高い周波数の信号が通ると反射や相互干渉などで画質に大きな悪影響を及ぼす。いわゆるディスプレイ切り替え機を使うのも論外である。筆者はSSH-TypeB+BB75(SPECTRAシリーズ専用)とMONSTAR CABLE社のケーブルを愛用している。広く市販されているケーブルの中では、EIZO純正ケーブルが価格もそれほど高くなく、品質も高い。
(蛇足ながら、普通に市販されているケーブルは水平同期周波数80KHzを越えたあたり(ドットクロック100MHz程度)から画質低下を起こす物が多いように思える。EIZO V30では90KHz程度(ドットクロック140MHz程度)から、MONSTAR CABLE JP MNPC B UP-6だと95KHzあたり(ドットクロック150MHz程度)から低下を感じる。SSH-TypeB+BB75に関しては、伝送特性が劣化する前にモニタ側の限界が来るように感じられるため、実のところ真価がよく分からない)
 突き詰めると、ビデオカード、ケーブル、モニタの組み合わせで決まる実用限界垂直同期周波数というものがあり、これを越える信号を要する解像度は実用に耐えないと言うそういう意味の事である(モニタの定格値とは異なる。映るけれどぼやけてしまう、では実用とは言えない!)。筆者の環境だとビデオカードの限界によって実用許容垂直同期周波数が決まることが多いが、残念ながらモニタやケーブルの品位によって限界が決まることも多いのが事実である。
 さて、実用になる上で初めて気にすべき、今度は発色の話。
 これは本当に趣味が介在してしまって難しいのだが、筆者が気に掛けていることをいくらか書いてみる。色の善し悪しはモニタの蛍光体の善し悪しが大きいのだが、元々のビデオカードの出す信号もまたカードによって大きく違っている。VRAMに書かれている値をRAMDACに出力し、プログラムにしたがってRAMDACはアナログ出力、これがハイパスフィルタとローパスフィルタを介してコネクタに引き回す、というのがビデオカードの映像出力過程なのだが、RAMDACの種類、フィルタの値の設定とフィルタの種類(EMIフィルタには何種類かあるのだが、見分けられる人に説明しても無意味だし、見分けられないことにはその特性云々を言っても仕方がない)、アナログ線の引き回し(canopus製カードなど、RGBの線に関しては自由曲線の太いラインでGNDでシールド状態で引き回しているなど「解ってるなぁ」と感心させられてしまう)などで画質が大きく変わってしまう。
 RAMDACについてだが、最近の物はほとんどビデオチップ内蔵で、外付けレベルの品位となってきているが、古い物だと内蔵RAMDAC=低品質と言って良かった。DACが悪いとどうしてもぼんやりなまったような絵になってしまう。ひどいものだと出力が安定せずに画面上でわずかに揺らぎが出てくる。発色に関してもレンジの狭い感じの絵が出ることが多いように感じる。余談ながら、IBM RGB52xという青いRAMDACがあり、私などはハイエンドビデオカードの象徴として結構ありがたがったりしたものである(TI TVP302x系も高品質だったが外見によるアピールは少なかった。現在TVP302x系のコアは3DLabsのビデオカードで使われているらしい)。
 フィルタだが、これは要するに電気回路で学ぶようなキャパシタと抵抗とRFチョークで構成された、周波数特性を変更するものでしかない。腐れビデオカードの場合、フィルタを外してやると見違えて画質が良くなったりする。モニタ側が高調波ノイズを含んだ信号を許容してそれによって画質が崩れないのなら要らない回路とさえ言えると思う(フィルタの意味は本来は下に追記したことによるもので、画質のために付けられている物ではない)。海外大手ビデオカードベンダ(特に米国籍)では規制による物だったかどうかは忘れたがフィルタによって発色がずいぶん押さえられてしまう事が多いと聞く。全体に灰色かかったようなくすんだ絵が出る物が該当する。
 具体的な絵についてだが、メリハリのキツイ絵、作った感じの少ない絵、暖かい感じの絵、色々あるがこれは完全に好き嫌いの領分だと思う。もちろん実用上、メリハリある絵が出た方がよい、絵を作っている様子がない絵がいいという用途もあると思う。筆者の主観では、画質に関してはずれを引きたくないのであれば、現在ではCanopus、Matrox、ATi、3DLabs、ELSAくらいしか選択の余地がない気がしている。過去にさかのぼればNumberNineなども選択肢にはいる。案外I-O DATAのボードも表示品位がよいが、自社開発でなくOEMのボードの場合はたいてい品位は良くない。ビデオカード市場から撤退したDiamondMultimediaの末期の製品の一部は比較的良好な表示品位だった(ViperIIなど)。
 また、モニタの品質による問題もあり、普及価格帯のモニタでは気づかない良さや粗が高級品を買ってみて初めて気づくというのも良くある話である。
 筆者の感覚による画質の特性を記述しておく。
 (最近の)Canopusはスーパーファインフィルタを利用することで非常に高い実用性と自然さの並立が得られるが、モニタ側の表示能力が不足する場合はファインフィルタの方が良好な表示が得られ、そのときは(むろん良好な出力品位の)他のメーカのビデオカードの出力品位と大差ない。スーパーファインフィルタを利用し、また利用する価値のある表示機材を使用する場合はおそらく世界最強の画質品位であり、専用オフションのSSH-TypeBなどを利用することで更に品位を向上させることが可能である。
 Matroxの画質は非常に解析的でシャープであり、かなりの高解像度までの実用性が得られる。特有の画作りが感じられる表示品位で、実用性という点に高い比重を置いた画質設計であると感じる。発色は押さえ気味であり、文字や線の視認性が高い。標準的なモニタ(非常に失礼な表現ではあるが、低質なモニタのこと)で見た場合でも比較的高い実用性が得られ、画質を理由とするMatrox支持者が多い理由がうなずける。逆に発色特性の良いモニタでは表示が暗い、色の出が悪いなどと感じることもある。
 ATiはそれほどシャープではないものの、発色が良い。全般に暖色系。解像度を上げすぎない範囲では良好な表示品位が得られ、中堅どころのモニタと併用して1280*1024程度までの解像度で利用するならば、良好な画質品位が得られる。解像度を上げすぎるとにじみが現れ、画の質感が陶器のようになってくる。
 3DLabsに関しては現在手元にないが、どちらかというと解析的な画であったという記憶がある。
 NumberNineに関してはNumberNineの項に詳しく書いたため記述しない。
 時々現れる当たりボードの画質傾向は、抜けの良いメリハリの強い画の物が多い。NumberNineの画と共通点を感じる。おおむねRAMDACの特性に素直であるのが特徴で、高級RAMDACの場合はモニタによってはゴーストが出たりすることもある。昔のCanopusなどもこの傾向。

余談:SETTEN No.1を使ってみた
 結構有名になった熱研の、接点導通材の類で、画質改善やら音質改善やらに効果があると言われている。今まで使っていなかったのは筆者がへそ曲がりであるため、世間的にもてはやされた品物は基本的に見向きしない、というのと単に面倒だった、という理由による。
 さて、ふと気が向いたので買ってしまったのだが、こんなWebを手がけている以上はまずはビデオカード関係からだろうということで、まずはCRTケーブル(BB75を含む)に塗ってみることにした。
 気のせいか、画面周辺部のフォーカスが良くなった気がする。1600*1200では若干気になっていた程度で、1800*1440や2048*1536では確かに意識されていた画面左上のミスフォーカスが改善されているように感じる。
 これが気のせいでないのなら、値段分くらいの働きはているんじゃないだろうか。
 多分いろいろと塗ってみるので、時々更新される気はするが....
 CanopusのSPECTRA系はボード内での接点があるため、改善効果があるかもと期待。

追加:噂のケーブルを使ってみた (2000/12/3 更新)
( MONSTAR CABLE社製 JP MNPC B UP-6 & JP MNPC 1 HP-6 )
 長い間、EIZO V30を越える一般用途のケーブルを探していたのだが、ついにそれらしい物を見つけたので、購入してみた。
 詳しいレビュー記事がユーザーズサイドのUser's Factoryにあるため、筆者としては文を書く意味を感じないが、確かにV30より、優れたケーブルと言えると思う。
 また、これに伴って本文の記述をいくらか変更した。

追加:フィルタの効能について(2001/4/7 更新)
 筆者にとってはほぼ常識だったので今まで書かなかったのだが、フィルタの効能や存在意義について勘違いされている向きが多いようなので、追記。
 フィルタは、画質と言うファクターに関しては基本的に害悪でしかない。ない方が絶対綺麗なのだから、その点に関して間違いはない。では、何故フィルタを付けるかというと、ビデオカード以外の電子機器に対して電磁障害を引き起こす原因になるからだ。
 電子回路というのは基本的にアンテナとしての効能がある。つまり、ビデオカードはただ画像を映しているだけで周囲に電波をまき散らす。これはまずいので、高調波成分をいくらかカットして他の機器に影響する帯域で発振しないようにしてやるのがフィルタの役割である。
 ただし、たとえば1280*1024/75Hzではドットクロック約100MHzの信号が出力されているわけだが、これは矩形波であることが望まれる信号であり、要するに100MHzに対して、もっと高い周波数の高調波成分を含む信号である(フーリエ級数の考え方)。高調波成分がカットされると矩形波から遠い信号になってゆくため、ドット間の境界がぼやけるか、変に鋭くなるなどの影響が表れる。要は画質が落ちる。
 フィルタはボード上に付いている物だけではなく、周波数特性を変化させるという意味ではコネクタもケーブルもフィルタである。が、それより遙かに大きな影響力のあるフィルタがある。フェライトコアという奴だ。
 CRTのケーブルの両端または片側に付いているこぶのような物だが、あれをニッパか何かで取り除いてやる(まさかとは思うがケーブルは切断しないように)と実体が磁石であることが分かると思う。画質面では百害あって一利なし、外してしまうのべきである。
 ただし、これによってアンテナとして発振するようになるとTVの映りが悪くなっただのラジオが雷みたいなノイズ拾うだの、障害があったり苦情があったりすれば、すぐにクラフトテープ当たりで復元できるようにフェライトコアは捨てずに取っておこう。
 筆者が使用しているケーブルにはフェライトコアが付いていない(か筆者が気づかない程度に小さいかのどちらか)。EIZOのケーブルには付いているが、これは切替器を通るためフェライトコアを取り除いてまで高画質化しようという気にはなれない。とまあ、筆者はフェライトコア取りのぞきをしていないのだが。

 うーさんからEMIフィルタについて寄稿いただきましたので、掲載いたします(原文ママ)。(5/3 2001 更新)

ビデオカードにEMI(Electric Magnetic Interference:電磁波障害)フィルタが付いている根拠

ビデオカードのEMIフィルタは、アースラインが浮いた様な粗悪なケーブル、シールドが不完全なケーブル、ディスプレイ側の回路の故障、粗悪なディスプレイの回路、コネクタの接触不良などにより、ラジオやテレビの受信はもとより、その他無線通信に妨害を与えることを防止するのが第一の目的です。

ビデオカードを販売するメーカーが、最悪の使用条件でも、不要輻射を防止するため、EMIフィルタを装備しているのです。

定評・実績のあるメーカーのディスプレイを使用して、かつ、定評・実績のあるシールドのしっかりしたケーブルを使用する限りは、EMIフィルタが無くても、まず、問題になることは無いと思います。(この場合は、漏れ電波は最小限であり、テレビやラジオの受信や各種無線通信に妨害を与えることは少ないと思われます)

日本の場合は、
情報処理装置等電波障害自主規制協議会(VCCI)
http://www.vcci.or.jp/vcci/index.html
の自主規制レベルでの規制。

外国メーカー、特に米国の場合は、
米連邦通信委員会 (FCC)(日本では、電気通信管理局(郵政省)に相当)の、FCC レギュレーション(日本の「電波法」に相当) により、不要輻射は制限されています。

外国メーカーのビデオカードでは、FCCレギュレーションに適合している旨のシールや記述があると思います。

たぶん、FCCの規定が一番厳しいので、FCCレギュレーションに適合していれば、ほとんどの国の規制(自主規制を含む)をクリアできるものと思います。


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